アート観客   since 1996

1996年からアートを観客として見てきました。その記録を書いていきたいと思います。

映画「この空の花 長岡花火物語」。大林宣彦 監督。2012.8.18~8.31。ポレポレ東中野。

映画「この空の花」。大林宣彦 監督。2012.8.18~8.31。ポレポレ東中野

2012年8月29日。

 椹木野衣ツイッターでほめているのを、というより、驚きと共に紹介しているのを村上隆ツイッターで知って、そのあとに会田誠もすごい、というような言い方をしているのを知って、見たいと思っていた。

 

 映画館へ一人で行くのは、変な気持ちだ。他のことと違う。美術館へ見に行くのと違うのは、時間が決まっているし、席があいてるのか、どのくらい混んでいるのか、そして、2時間以上の時間、トイレは大丈夫だろうか、そして、映画館へ入ると思った以上の人がたくさんいて、静かな熱気がこもっていて、夏の暑さがよけいに暑くなった。階段に座るなんて、珍しいけど、こういう待ち時間に座りながらも、あんぱんを食べて、おそらく映画を待っている時間にしかない少しのあせりと期待と、独特の緊張感がある。
 
 映画が始まる。主演の松雪泰子が、いきなりこっちを向いてしゃべり始める。一輪車で走る少女が出てくる。時間も場所も一緒になったりして、そして、長岡の歴史を柱にしながら、目が離せなかった。ものすごい密度と情報量。しゃべっている言葉が文字になり、だけど、そのあちこちに行ったりするのが、あまり気にならなかった。反戦的なメッセージが濃いのかもしれないけど、本気なのは分かった。なんだかすごいものだ、というだけは分かった。途中で主人公が、伝わります、と透明な(こういう言い方恥ずかしいけど)確信の部分や、模擬原爆で亡くなった家族がいて、今もその場所で祈るそのご本人の90歳を越えた姿を見て、その2カ所で一番泣きそうにもなった。最後まで、なんだかすごい。というか、やりたいこと、全部をやって、そして、成立させているのが、すごい。
 
 最後に「大団円」という文字が出て、おお、と思ったら、そこからまた長い。話したいことは全部出す。こんな表現がありえるんだ、と思ったが、ずっと変らないエネルギー。70歳を越えた人が出来るのがすごい。ものすごい重たいテーマだけど、CG
がファンタジーで、そして、この人のセンチメンタリズムがこれだけ本気だったという驚き。なんだかすごかった。体験に近かった。
 
 
 
 
(2012年の時の記録です。多少の加筆・修正をしています)。

 

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