アート観客   since 1996

1996年からアートを観客として見てきました。その記録を書いていきたいと思います。

映画『ヒミズ』。2012.1.29。チネチッタ川崎。

 

映画『ヒミズ』 予告編

https://www.youtube.com/watch?v=dGwTNzwjtas

 

2012年1月29日。

 予告編を見て、あざといかもと思いながら、そのエネルギーとかテンションがすごくて、見たいと思ったら、妻も同じように感じていたようで、いつか見たいと思っていたけど、義母がショートステイに行っていて、その上で今はとにかく見たいというアートがなくて、というよりあったけど、ギャラリーで日曜日は休みだったりして、という状況だったから、今日、行くことにした。それも久々のチネチッタ川崎。券を買う時に、座席まで指定できて、その後は少しゆっくりできるというシステムで、なんだかありがたいと思ったことがあって、それは母が亡くなった後、見に行った「大日本人」の時だったはず、と後になって思い出した。

 

 起きて、洗濯もして、義母の布団も干して、一通りの家事をしてから、出かけたけど、映画館というのは、一種のぜいたくな場所という感覚が変らない、と言いながら、年末から、今年は、この前、「ちづる」を見に行ったばかりだから、かなり見ている方になる。

 

始まる前に、隣のビレッジヴァンガードがなくなっていて、そのままらせん状になっている坂道を上がって行ったら、上にアート雑貨の店みたいなのがあって、そこで妻は集中してみて、いくつかの物を買った。

 

 それから映画館へ行き、中でコーヒーなどを買ったら、かなり高く、水まで260円もして、買っておけばよかった、と思ったが、映画館の高い背のイスに座って食べていたら、妻も初めて買ったチュロスについて、おいしいと言っていたので、よかったと思った。

 

 始まったら、震災の津波に襲われた町の映像が使われていた。それだけで、ものすごくいろいろな事が伝わってくる。その町を背景に、とんでもない父と母がいる中学生の男の子が、どんどん追いつめられて、父親を殺してしまったりするが、その男の子のことを、ストレートに好きな女の子が、「神聖かまってちゃん」の映画の女優さんで、そのセリフとかがあまりにも大げさだろう、とも思ったりもしたが、だけど、尋常でないテンションがずっと続いて、そして、叫ぶシーンが多すぎるとはいえ、その気持ちはすごく伝わってきて、ある意味で、その追いつめられ方が共感できて、出来たら、殺してしまうほど追いつめられて行くところでは、いったん心がうそのように冷静になったり、ということがあれば、もっといいのに、などと思う自分がいた。

 

 人が刺されたり、というような暴力の場面でも、その絵柄に、ちょっと笑ってしまったり、自分の気持ちがまだまだすさんでいるんだな、とも思った。だけど、最後の「がんばれ、すみだ」というようなシーンはものすごく力があって、ウソがなかったし、でんでんの演じるやくざは、妙な迫力とリアリティがあったし、モト冬樹もなんだかすごかったし、窪塚洋介は、チンピラっぽい役がすごくはまっていた。

 

 残念だったのは、最後の20分くらいトイレに行きたくて、集中力が下がっていたことだった。出来たら、早めに行っておけば、最後にもっと気持ちが盛上がったのに、とも思う。最後の方は、主人公2人のアップが多く、それで画面とストーリーが持ったのだから、すごかった。ふざけんな、というような叫びは確かに自分もそうだ、とも思えた。だけど、もっとテンションを高められたのかも、などと思うのは、ただの欲張りなのかもしれない。

 

 夜中に、ポッドキャストで、「宇多丸のシネマハスラー」を聞いた。最後の方で、これは、という話をしていた。一つは、主人公の父親があまりにも悪意を出しすぎて単純化しすぎているところ。さらに、女性の方も、問題がある家庭にしてしまったこと。この監督のいつものパターンとはいえ、これだと異常な特殊例になってしまうのだから、こちらは普通側でいるべきではないか。それに何より震災の扱い方。最後、がんばれ、すみだ。に震災の光景が重なるのは、分かりやすすぎるし、押しつけがましくなり、やりすぎだと思われる。やるのなら、倫理的な問題がクリアされたとしても、この1回にすべきか、そうでなくても、そうした光景を多用しすぎてしまっている、というような指摘は、本当にそうだと思ったし、実はこの監督はロマンチックなのだろうと思ったりもした部分と重なるような気がした。

 

 

ヒミズ』 DVD

https://amzn.to/3Ob8kNg