「大日本人」作品データベース
https://www.shochiku.co.jp/cinema/database/04660/
本当に久しぶりに映画を見にいく。
３月に奈良のドキュメンタリーを見て以来で、あの時は母は生きていた。「大日本人」のコマーシャルを盛大にやっていた頃、母の症状はどんどん悪化していて、そして、死んでしまい、この映画は見たかったけど、無理だと思っていたら、長くロードショーが続き、葬式も終わって、そして、四十九日を待つだけになり、義母のデイサービスで、午後３時に終わる回、迎えの時間ギリギリの時に見に行こうとした。
映画が始まると、半分くらいの入りの客の中に、すごくやたらと笑う客がいて、（おそらく松本人志のファンなのだろう）その客に負けないように、みたいな気持ちになったわけではないのに、私も笑っていた。
ドキュメントみたいにダラダラしている場面が続き、自分がもし巨大になって戦う、みたいな事が、それから起こることを本当に知らなかったら、もっと退屈していたのだろうか？などと思い、もっと最初のうちに何も知らずに見たら、また違うのかも、などとも思いつつ、でも、この対象をずっと追っていく感じ。ドキュメントな感じは、すごくリアルに思えた。
そのうちに巨大化して、戦う相手の「獣（じゅう）」と言われる怪獣がすごく面白い造形だと思う。考えたら、もし、こういうヒーローがいたとしたら、こんな風になるかも、と思えた部分ではエヴェンゲリオンと似ていた。途中で、どうしてもトイレに行きたくなり、外へ出た。自分のひん尿ぶりに嫌になる。その後、大日本人へと巨大化する際に、おおきいパンツを履くとか、UＡのマネージャーぶりとか、そのざらざらした感じ。
そして、そういう中で、妻にも娘にも去られ、命をはっているのに、はっきりと迷惑がられ、そんな事だけでなく、全体に漂う悲しさが、さらにリアルだった。４代目と言われる祖父が老人ホームに入って、巨大化して徘徊したり、今は介護を続けている自分の立場を思い出し、でも、何となく伝わってくるものがあったり、最後に国の都合で無理矢理巨大化させられて、すごく強い赤い「獣」と戦わされる立場になり、助けに入った４代目は蹴られ、自分がとどめをさすような事になり…ここから盛り上がったら、間違いなく感動のラストになっちゃうけど、どうするんだろう？と思っていたら、急に実写のコントになった。
私にはどうしても逃げに見えてしまったが、でも、後に陣内智則がバラエティーで「どうして最後の１５分はああしたの？」と聞くシーンがあって、ホントにもっともだとも思ったけれど、でも、とまどいながら見ていて、結局は笑ってしまい、同じように観客に現実へ帰るようにうながしたエヴァンゲリオンを思い、ただ、ここから戦って勝っても負けても、おそらく感動的になってしまっただろうし、それは、今までの映画の形というものにひっぱられるように、そっちへ進んでいたようにも見えたのだけど、それを裏切るとなったら、そうでない道を選ぶのであれば、自分のジャンルであるコントという蓄積を持ってくるしかないだろうとは思った。
だから、松本人志の未来のためには最後の１５分間はあったのだとも思うけれど、だけど、せめてコントのような実写ではなく、そのまま同じ映画の映像として、同じ内容をやったら、どうだったのだろうか？みたいな気もしたけれど、そうした打つ手はすべて考えた上で、あの選択だったのだろう、みたいな事は思う。最後に、これからの可能性を模索した、というような形にはなっていて、それが蓄積がないから、実写に変わったから、というだけでなく、とってつけた感が強かったのかもしれない。
ただ、そういう場面があったから、終わった後も、いろいろ話したくなったのは間違いないし、途中の様々な場面が頭の中に、ふっと変に生々しく蘇ったのも確かだったから、すごく映像の強さみたいなものはあったと思う。こういう時期だけど、やっぱり見てよかった、とは思った。次に監督をやったら、やっぱり見に行くのだろう、と思った。
後日、といっても、半年以上たった頃、東スポの映画大賞というのがあって、審査委員長が北野武で、松本人志に賞を渡し、カンヌにも招待されたし、撮り続けてほしい。間があくとカンもにぶるから、とまったく笑いのないコメントをしていて、本気なんだと思った。そういえば、あれから、深夜に「TAKESHIS'」をやっていて、録画して見た。ホントにあの、絶望が漂うような孤独な感じはすごいと思った。次も松本人志は映画を撮るのだろうか？
