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1996年からアートを観客として見てきました。その記録を書いていきたいと思います。

映画「かしこい狗は吠えずに笑う」。2014.1.4~1.10。キネカ大森。

映画「かしこい狗は吠えずに笑う」。2014.1.4~1.10。キネカ大森。

2014年1月10日

 何かで予告編を見たり、その解説を読んだり、失礼ながら、監督のことを知らないし、若いから最初の作品だということで、でも今の時代のものだろうな、などと思って、見に行きたいと思って、気がついたら最終日になっていた。

 

 だけど、上映後に渡部亮平監督のトークショーもやるということで、さらにはキネカ大森では最後の一本で800円でおトクなので、と思いながらも、向かった。電車は通勤と逆なので、それほど混んでいない。

 

 着いたら、いつも人が少ないイメージの映画館だったのに、整理券的なものを渡される。25番。次の映画のために、もうそんなに人がいるのかと思ったら、15分前になり、番号を呼び始めたら20番からだった。中に入ったら、もうあちこちに荷物が置いてある。2本立てで、一本目の映画も含めての整理番号だと分かった。小さい映画館。40人くらいでいっぱいになりそうな場所。

 

 始まったら、その映像が、というより撮影場所の選択が的確だと、最初の線路のシーンで思った。こだわりみたいなものはあるのだろうけど、でも、それは映像というより、映画が先にある、ということなのだろうと、あとになって思ったりもする。

 

ナレーションのような言葉が、時々、不自然でやりすぎだろうと思ったけど、それはあとになって、つながってくることで、最初は女子校生の友達の話みたいで、そして学校でざらざらした空気感みたいなものは「桐島、部活辞めるってよ」を思い出させていて、それでいて、もう少しドキュメンタリー寄りになっていて、確か男の監督で、それも20代前半で、細やかだけど、ちゃんと客観性もあって、という言葉が難しければキチンと人に見せるものになっていて、初監督で自主制作みたいな事でなく、切迫感みたいな緊張感がずっとあって、ただ、それがだんだんふくらんで恐くなっていく。

 

ある場面で、異常な状況が隣の部屋にあり、それを作ってしまった人間が、鍋でエビを食べているところがあって、その異常な部分はもっとさらっと映したり、もしくは短めにしたりして、その事でかえって恐さを増したりもするのだけど、その異常な場面に遭遇したとして、その人にとってはその時間は短くても恐ろしく長く感じる、ということを考えれば、とてもリアルな感じがした。

 

 さらには、もっと異常性が高まって、まだ高まるのか、と思ったり、その場面もまだ終らないのか、という長さもあったけれど、確かに、巻き込まれたら、こんな感じの長さに思えるのだろうな、と思ったし、目がはなせなかったし、体が離れられない、という感触に近かった。

 

 最後は、ちょっと短めに終って欲しい、というような気持ちもあったけれど、だけど、そりゃ才能あるや、というのが分かったし、もし自分が若かったら、もっとうらやましくて映画の面白さを素直に見られなかったかもしれない、と思うくらいだった。

 見てよかった。

 

 ほぼ満員の会場。

 

 そのあとに監督のトークショー。すごく人当たりのよさそうな、歳よりも上に見られそうな好青年。

 

 最初に「女子高の感じをなぜ男の人が、あんなに分かるんですか?」みたいな質問が、若い女性から出て、あれがリアルと思ったのは、そんなにはずしてなかったんだと思ったと共に、最初は平凡にさえ見えた監督の答えが、ものすごく細かい所を丁寧に見ていて、同時に、そんなことまで気にしているんだ、と思えたり、本人が友だちに嫉妬が強くて、という話をしている時の気配は、映画の恐さとダイレクトにつながっていたし、ただ、何もないところからツイッターやミクシイや、いろいろなことを使って、150万円で(自費だからきついと思う)作り上げたと知ると、資金のことを強調したら失礼になるような映画だった。

 

 そういえば改めて映画を振り返ると、最後の方で、いろいろな混乱をしかけてくるような、つまり2人の女子校生が、実は役割が逆だったかもしれない、と思わせるような違和感などが残ったりもした。全体的に体力もあり、時には臭いまでしてきそうな生理にまで届きそうな映像だった。

 

 誰も聞かなくなったので質問をした。変な感じで聞いてしまったが、客観性の高さについて、聞いたら自主映画の感じがあまり好きでなく、人に見てもらいたいので、という言い方をしていた。

 

 納得できる答えだった。

 

 

 

 

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「キネカ大森」

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