アート観客   since 1996

1996年からアートを観客として見てきました。その記録を書いていきたいと思います。

書籍 『懐霄館 白井晟一の建築』

 テレビ番組「日曜美術館」で、白井晟一という建築家のことを初めて知る。

 

日曜美術館』(白井晟一

https://www.nhk.jp/p/nichibi/ts/3PGYQN55NP/episode/te/PYQ98GK2QZ/

 

 もちろん、建築界では有名で、だから、私が無知なだけだったのだけど、その番組で見ただけでも、独特な建物を設計し続けた人で、写真で見ても、何しろ自分の考えを貫く強さを持った佇まいの人だった。

 

松濤美術館

 

 その白井氏が、東京渋谷の松濤美術館を設計した人で、というのを知った時に、なんだかとても納得がいった。

 

松濤美術館

https://shoto-museum.jp/aboutthemuseum/project/

 

 あの建物が竣工したのが1980年のはずだったのだけど、行くたびに、真ん中に噴水を設置するという、とてもユニークな作りだけでなく、とても内省的な、空気の重さを感じさせる不思議な雰囲気で、とてもあの浮かれ始めた80年代にできたとは思えず、何も知らないときは、もっととても古い建築物だと思っていたくらいだった。

 

 

『懐霄館 白井晟一の建築』

https://amzn.to/3Nsx7eI

 

日曜美術館』の中で、いろいろな建築物が紹介されていて、自分が知らないだけで、どれも独特で、しかも見事に同じ思想を形にしたような、強すぎる意志を感じ、その建物によっては、よくここまで形にした、といった驚きのようなものを感じさせた。

 

 その中で、特に凄さを感じたのが、『懐霄館』という建築物で、それは、長崎市佐世保市にある、親和銀行本店という金融機関の本拠地という、社会の中で、資本主義の中心地で、合理的であるはずなのに、その建物のあちこちは、その存在の意味を考えさせるような部分も少なくなく、建物としては興味深かったが、やはり、銀行が、よくこうした建築物を建てることを依頼した、といった気持ちになる。

 

 そのことを、もう少し詳しく見たいと思って、この『懐霄館』を図書館で借りようと思って、近くの書庫にあると知り、出かけ、頼んだら、思った以上に大きい本をスタッフの人が持ってきてくれた。

 縦50センチくらいあって、びっくりした。

 

 正確には、縦42センチ×横30センチ×厚さ2センチ。

 しかも、持つとかなり重い。

 すごく大きい本だった。

 

建物の写真

 その本を開くにも、なんとなく気持ちが引き締まるというか、ちゃんと拝見しないといけないのではないか、そんな思いをさせる佇まいで、最初は、こんなに大きくする必要があるのだろうか、と思うくらいだった。

 

 白井晟一辻邦生磯崎新。それぞれの文章はあるのだけど、白井の建築物の持つ重量感のようなものを表現するには、この大きさと重さの中で写真もたっぷりと使わないと、とても伝えきれないのではないか、ページを開いていくと思うようになる。

 

 確かに、この『懐霄館』は、九州で、行ったこともないし、あまり行く機会もなさそうなので、何かを語る資格はないのかもしれないけれど、それでも、唯一知っている松濤美術館のことを思い出して、想像すると、この書籍の大きさと重さ自体が、白井建築というものには、必要なのではないかと思えてくる。

 

 私にとっては、他の書物を読むことと同時に、東京都内に住んでいるのであれば、なかなか行けていないノアビルに行くことが、建築というものへの理解に近づくには、やはり必要なことなのだろうとも感じた。

 

 そして、この本を手に取って、その大きさと重さを感じ、その建築を表すには、ふさわしいと思えてくる。

 

 

 

白井晟一入門』

https://amzn.to/3qG9w1h