アート観客   since 1996

1996年からアートを観客として見てきました。その記録を書いていきたいと思います。

三沢厚彦 アニマルハウス:謎の館。2017.10.7~11.26。渋谷区立松濤美術館。

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三沢厚彦 アニマルハウス:謎の館。2017.10.7~11.26。
渋谷区立松濤美術館

2017年11月9日。

 気がついたら何度も何十回も作品を見ている作家がいて、三沢厚彦は、そんな印象があるというか、振り返ったら、例えば青森でも見たし、他の場所でもかなり見ているような気がするが、動物の彫刻という、どこかで見たような、誰かがやっていたような、それでも誰もがやり続けてこなかったような場所だったような気もする。

 

 資料などを見ないで自分のイメージだけで作り上げている、といった話をどこかで読んだ気がして、確かにそうした裏付けがあれば今でも作品として成立するものになるのでは、と思った記憶があって、だけど、そんなことばかりをいっているのは観客側で、その間にも三沢はずっと作り続けていたのだろう。動物の数は多くなっていったのだろう。そして、それを見る機会はこれからもあるのかも、と思っていた時に、突然、松濤美術館で展覧会が開けるのを知った。それも、他の様々なゲストのアーティストと共に展覧会を作って行く、ということらしい。それは、三沢も参加したAtoZに似ているともいえたが、その時の奈良美智は参加していなかった。

 

 渋谷駅で降りて、歩いて、Bunkamuraを過ぎて、まだ歩いて、ちょっと迷って、人に聞いたら微妙に違う道を教えられたものの無事に着いた。いつ来ても、地下の噴水があるせいか、湿っていて、暗い空間という印象で、それでも時々、赤瀬川原平も参加していた「ハイレッドセンター」の企画だったり、古道具屋坂田の展覧会をやったりと、油断が出来ないというか、かなり魅力的な展覧会があって、今回もその一環かもしれない、と思って、妻に相談したら乗り気になってくれた。

 

 入り口にすでに熊が立っている。どうやら、動物を等身大に近い大きさで作っているそうで、だから、重量感があって、などと思うのは、その存在に頼もしさみたいなものもあるからだった。普段は見られないような回廊といっていい場所から、地下の展示を見ることも出来た。

 

 小林正人、という人のキャンバスそのものをはがしたような作品。そして舟越桂の作品は、前にも見たのだけど、相変わらず、妻が言うには「そばにあるのに、遠くにいる感じ」の静かで孤独なたたずまいで、もしかしたら、もう少し前だったら、こうして他の人たちの作品たちの中に置かれるのを拒否していたのかもしれない、とも思ったが、こうしていろいろな中にあっても、線を引くようにくっきりとそこにあったし、見られて何だかうれしかった。たぶん、もう10年くらい前に見たのもしれない作品も、新鮮さはあった。

 

 杉戸洋の作品は、やはりどこか遠くにあるような、はかないような、あいまいな印象もあって、もしかしたら、こうした人たちと比べると、そこにどっしりとあって、すぐそばで見ると、ちょっと驚くような存在感がある三沢の作品は、相性がいいのかもしれない、等とも思った。

 

 地下の展示室から階段を使ったのは、その途中にも作品たちがあったからで、それを見ながら歩いていって、2階の展示室のチョイスや並べ方は、杉戸洋に任せたようで、その潔さが成功していて、ごちゃごちゃしているようで、だけど、それぞれの作品がうもれるわけでもないけど、変な言い方だけど、作品同士が仲良さそうに見えるような並べ方だったし、三沢の作品の下に、じゅうたんが敷いているせいか、いつもは古いのに、ちょっと素っ気ないような、この空間が、家に招かれたような気持ちになれた。以前は、2階のこの展示室でコーヒーも飲めたのだから、こういう時にこそ、それを復活させてほしいと思ったりもしたが、いる間、ずっと楽しめた。

 

 帰りにパンケーキを食べた。この前、原宿で食べて、違和感があったのが、やっと納得感になった。

 

 

(2017年の時の記録です。多少の加筆・修正をしています)。

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