アート観客   since 1996

1996年からアートを観客として見てきました。その記録を書いていきたいと思います。

「アーティストファイル 2008  現代の作家たち」。2008.3.5~5.6。国立新美術館。

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「アーティストファイル 2008  現代の作家たち」。2008.3.5~5.6。国立新美術館

2008年4月21日。

 

 新しく出来た国立新美術館で、今のアーティストの展覧会をやると知って、行きたいと思った。

 乃木坂で降りて、ちょっとかっこよく作ってある連絡通路を上がると、また通路があって、入り口になる。少し晴れてきて、その間が気持ちよかった。

 黒川紀章という建築家の遺作に近くなるはずの、この建物は、黒川紀章の作品、というような偏見が自分の中にあるせいか、写真で見た時は、逆円錐形のレストランやカフェもすごくかっこよく見えたのだけど、実際に見ると、何だか少し安っぽく見えてしまうのは、気のせいだろうか。ただ、思ったよりも建物が小さく思えてしまうだけなのかもしれない。上の階や下の階へ行く時に、エレベーターも少ないのだから、エスカレーターや階段がもっとあった方が(本当はあるのかもしれないけれど、2回行った範囲では見当たらなかった)移動がしやすいのに、と微妙な不満があるせいで、よけいにそう見えるのかもしれない。

 

 今は、新しい建物は公衆電話が少ない。

 ここも地下1階のミュージアムショップの奥にとりあえず1台あるのを掲示板で見て、家に電話をして、留守番電話を聞いた。

 ショップをいろいろ見て、それから入場券を買おうとして、外のブースへ行ったら、そこではモディリアーニ展のものしか売っていなくて、2階の会場で直接買った。以前、森美術館での入場券の半券を使って200円割引をしてもらった。

 

 竹村京。

 部屋を再現するように刺しゅうなどを使って、作品を作っている。

 その日常への固執みたいなものは好感が持てるが、でも、もっとやって欲しい、というような気持ちになる。

 

 白井美穂、という人のビデオ作品。

 注文の多い料理店。をやっている。なんだか見てしまう。文化祭みたいな印象があった。

 

 エリナ・ブロテルス。写真の作品。劇的な感じはするけれど、そのナルシシズムが少し嫌かな、と思っていたら、その後にポリクセニ・パパペトルー、という人の作品を見たら、やっぱり劇的で美しい一瞬みたいな写真で、自画像っぽいか、物語っぽいかの違いはあるけれど、同じようなナルシシズムを感じ、サラ・ムーンの「ミシシッピーワン」という映画を渋谷で見た時の、妙な居心地の悪さを感じた。

 

 祐成政徳(すけなり まさなり)という人の作品。

 旗が並ぶ。

 金属の細長い家が長く床をはうように続く。

 部屋のすみに、チャコールグレーの大きいバルーンがある。そのバルーンは1日1回、空気を入れないとしなびてしまうらしい。というような説明を聞いたけど、係の人のテンションは低く、こちらも低くなった。金のイスは座っていいですか?と聞くと、作品なので、と言われ、バルーンも同じことを言われた。

 

 あとでカタログを見ると、この人のこの作品は7年前に佐倉美術館でやったそうで、入り口のスペース…確か昔、銀行だったところ…にいっぱいにある写真を見たら、その方がよかった。金属の細長い家も、どこかのビルのすみかどこかにあったが、その方が見たいと思った。

 この作品は、この天井も高く、周りも白い、ある意味でぜいたくなこういうスペースよりも、もっと薄暗い、もう少し小さい場所で、なんだか圧迫感を感じながら見た方が面白かったかも、などと思い、そういえば、最初の竹村京という人の作品も、狭い方がいいんではないか、と観客としての勝手な感想を持った。

 

 さわひらき

 暗い部屋。6つの箱に、いろいろな映像が映る。

 極端なスローや、かなり高速なもの。

 この人は、影のらくだ部隊を見て、すごくいい、と思って、でも、これからどうするんだろう?と思ったら、時間というものを正面から描こうとしている、ように思えた。気持ち良さ、というサービスといっていいものもあるし。

 そして、ただ映像を見せるだけではなく、暗いので目が慣れてから入ってください、と言われるような暗闇の中で見せることで、ここでしか分からない感じも出そうとしているのだ、とも思ったのは好意的すぎるだろうか。でも、体全体が暗闇に包まれただけで、なんだか違う気持ちにはなって、その中で見るから違ってくる、という事はホントだと後になって思う。

 

 最後の部屋は、市川武史。

 ゴミのようなビニールの風船のような彫刻のような。

 だけど、なんとなくピンと来ない。もっと汚いとか、もっとキレイとか、そういう事ばかりを要求してしまうのは観客としてのワガママなのだろうか、とも思った。

 だけど、知らない作家も知ることが出来たし、こういうグループ展は、来年もやってほしいし、長く続けてほしい、と思ったのも本当だった。

 

 

 

(2008年の時の記録です。多少の加筆・修正をしています)。

 

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