2013年4月21日
映画は、ダークで、でもきれいな画面だった。
その色彩の感じ、出てくる人物の服の統一感。そして、人肉食。弱い人間は食べられてしまう。そして、殺されるというのが、日常の中で行なわれる。主人公は、親を失い、投身自殺をした親は、すぐに運ばれ、人肉として扱われるが、それは、すぐに袋に入れられるので、むきだしの残酷ではないが、恐い、というよりも、本当に、これからの世界にはありそうにも思える。
そして、そうした環境の中、自殺を試みて、助かった主人公が生き残って、今度は、人をテストする側に回る。テストを受けるのが、私にとっては、他人事ではない年齢層。だけど、理不尽とも思えるそうしたテストを受けて、乗り切らないと、殺されて、人肉にされる。必死で、従う。だけど、それをクリアしたとしても、異常に管理され、不自然な笑顔を受け続けることを強制された駐車場の管理人になれるくらいで、その階級ははっきりとしているが、それでいて、子作りは変に奨励されている。
マンションの暗さや形や、質感や、そのイメージの絶望感と、でも画面としての美しさは、ずっと続く。あとで低予算映画と知ったが、そんな感じはしなかった。理不尽なテストを受けている途中で、死んだ人を見ていて、他人事ではなかった。履歴書を送っては、返される自分とだぶってしまう。そして、人が死ぬことがあまりにも身近で、しかも、管理社会なのだろうけど、それをみんなの意志で選んで、支えている気配までするのが恐い。今とつながっている気がしてくる。気持ちは重くなってくる。
主人公の男性は、強制教育所のような場所で自殺を救ってくれた女性と結婚している。でも、ホントにその女性は見事に気力を失っていて、それは、夫が潜在的な意識で子どもを作ろうとしないから、みたいなことを言っていて、最後、彼女はクルマで人をひいて、その現場に免許証を捨てて、次の日、部屋に警察らしき人達が来る。窓から飛び降りる。夫も続く。下にはネットがはってあり、死なないが、意識を失った彼女を手荒く蘇生させる。少年時代の逆のように。そして、逃げる。この世界はやっぱりおかしいということに気づいて。だけど、たぶん逃げ場はない。それで、でも終る。
一緒に行った青年が買ったカタログを見せてもらった。主人公が、この映画の中では、人肉食を食べてない、という設定を初めて知る。この監督は、CMを撮りながら、この長編映画が実質上のデビューだが、40代で、自分たちで会社まで作って、この映画を作ったらしいことも知り、刺激となり、励みにもなった。すごい。
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「シアター・イメージフォーラム」
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