『現代アートとは何か』 小崎哲哉
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バランスがいい本だと思う。現代アートに関する要素、これだけの幅を、比較的、遠慮なく書ける(ように見える)人は、こういう立場しか無理なのかもしれない。カルチャーウェブマガジン「REAL KYOTO」発行人 編集長。「ART IT」を創刊した人。
Ⅰ マーケット
Ⅱ ミュージアム
Ⅲ クリティック (批評)
Ⅳ キュレーター
Ⅴ アーティスト(アート史の参照は必要か)
Ⅵ オーディエンス
Ⅶ 現代アートの動機
この要素に分けて論じられているから、現代アートの全体が見やすい。
その上で、どうして、現代アートのジャーナリストの追求が甘いのか、という指摘につながる。
いかなるアーティストも、グローバル資本主義と癒着したアートワールドに棲みついている、いわば同じ穴のムジナであり、そのことをジャーナリストたちが知っているからだ。
そして、日本国内でアートを見ているだけでは決して見えない億万長者の関わりや、大物アーティスト同士の闘争なども垣間見ることもできる。
さらに、改めて、現代アートの始まりについての言及もある。
2017年に、あるアンケートがとられ、「最も強い影響力を持った20世紀のアート作品」。第一位。デュシャンの「泉」。得票率64パーセント、という事実の提示があって、それは読者にとっても納得がいくことだった。
そこから、現代アートが始まったのは間違いないと思うからだ。
現代アートはもはや「美」を志向していない。
さらには、創作の動機も分析されている。
◎現代アートの作家が抱く創作の動機は、大別して7種ある。
「新しい視覚・感覚の追求」「メディウムと知覚の探究」「制度への言及と異議」「アクチュアリティと政治」「思想・哲学・科学・世界認識」「私と世界・記憶・歴史・共同体」「エロス・タナトス・聖性」。
その上で、こうしたことまで指摘している。
評価の精度を上げるには、見聞を広め、知識を増やし、人生経験を深めるのが唯一無二の方法である。
最終的には、こうした言葉もあった。
日本のアートシーンにおける問題は、ほとんどが情報や知識の欠如に起因する。
現代アートを考えるためには、必読の一冊だと思った。
『ACROSS』 小崎哲哉 インタビュー
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