1996年7月。
「世界で初めてのお座敷画廊」。そんなうたい文句につられて、最寄りの明大駅から歩いて10分かかる場所へ行こうとした。どこにあるか分からないまま、歩いて、住宅街の中にある、古いタイプのいわゆる木造モルタルのアパートにたどり着く。その1階の一室。たぶん、誰かの住居で、それで開廊時間が限られていたことに納得がいく。月曜日は休廊。火曜日から金曜日は、午後6時から午後10時まで。土日は、午後2時から午後10時まで。確か、土曜日の午後にお邪魔した。
『昭和40年会』。同い年というだけで、それほど共通点がないという6人のアーティストの集まりということだったが、畳の上や塀の上を使った作品は、印象が似て見えた。それは、古いアパートの1室に並んでいるせいもあるかもしれない。
カラオケを延々と歌う姿がずっと映っているビデオ。パルコ木下。
色のついた水を入れて塀の上に並んでいるペットボトル。大岩オスカール幸男。
たぶん誕生日を祝い続けている模様を流している映像。曽根裕。
ただのカーペットにしか見えない敷物(実はジゾーイング)。小沢剛。
押し入れを利用した少したつと妙なものがあったという印象しかない何か。(これは、自分の理解力などが不足していたかもしれず、申し訳ないですが)。松蔭浩之。
小さな机と散乱したわら半紙があって、製作中も見せようとしているような作品(これは、あとで「ミュータント花子」だと分かりました)。会田誠。
畳の部屋というせいもあって、全てが、なつかしい貧乏臭さで覆われていた。入場料は300円。さらに300円を払って、座ってお茶を飲んだ。ただ、何かを垂れ流しているだけなのではないか、という印象もあるものの、生々しさがあり、嘘は少なく、見ることが出来た。それは、まだ自分に見る目がないだけなのだろうか、と自分を疑うが、なんだか楽しかった。
こうして、部屋を使えば、展覧会はできる。そのことも、とても勇気づけられることだった。
ボランティアで製作されている無料の(のちに有料)アートマガジン『void』を知ったのも、このシナプス画廊だった。
(1996年の記録です。多少の加筆・修正はしています)。