アート観客   since 1996

1996年からアートを観客として見てきました。その記録を書いていきたいと思います。

「Mr. “lost”—— めんたーる すけっち もぢふぁいど ——」。2015.9.26~10.13 。 Hidari Zingaro。(中野ブロードウェイ3F)。

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「Mr. “lost”—— めんたーる すけっち もぢふぁいど ——」。2015.9.26~10.13 。 Hidari Zingaro。

 

2015年10月11日。

 作品を燃やして製作をしている、という情報を知り、Mr.の作品を見なくていけない、と思った。会期は短めだったが、トークショーもやる、ということも知り、Mr.がライブで話している姿は見た事がないので、一度は見たかったので、ちょうどいい機会だとも思った。

 

 作品は、確かにMr.が描き続けて来た少女の絵だけど、それだけで仕上げているのではなく、穴が開いていたり、焦げていたり、とても重厚な質感があって、さらに、あちこちに文字が書いてあり、内容は生活に密着した一見重いとはいえないもののようだけど、それでも、そのことがリアルさを増していて、作品として、魅力的で、目の離せないものになっていた。だけど、見続けていると、現実感が薄いというか、夢みたいに見えるのは自分の今のあまりよくない体調や、それに伴う気分もあるのかもしれない、などと思った。

 当たり前なのだけど、改めて、作品として、きちんと仕上げられている。それでいて、レシートの裏に描いていた頃の作品の切実さも、忘れていないような感覚になる作品だった。

 

 トークショーの事は、このギャラリー内の文言では、一言も触れられていないので、そこにいるスタッフの方に聞いたら、確かに開催されるので、その時間になったら、行こうとした。

 

2階の現場は、数人のスタッフらしき人がいて、Mr.本人もいるけど、閑散としていて、10分前に聞いたら、ここでよかったし、いっぱいになるので、とご本人が教えてくれた。

 登壇者は、Mr.以外は、「なほるる」、「派手な看護婦」という人達で、失礼ながら、こちらの無知で、初めて聞いた名前ばかりだったけれど、少しずつ観客は集まってきて、ほぼいっぱいになった。

 トークショーは、メンヘラの話題から始まった。そんなに活発に話が弾む、

という印象ではないけれど、情報量は多いトークショーに思えた。

 

 Mr.が、実兄の話をするのを初めて聞いた。そして、Mr.は、自分も調子が悪かったりもするが、最近、アニメではなく、動画を良く見ている、と言っていた。それも、駅構内で奇声を発している状況を自分で撮ったり、過去の覚醒剤中毒のことを語る映像を製作している「金バエ」。陸橋の階段を落ちる姿を撮影している「しけたきのこ」。女性では「碧上(あおがみ)」。そうした人たちの動画も、実際に見せてくれた。

 

「派手な看護婦」は、プロのマンガ家で、だけど、描くのはつらいとか、幻覚を見たらしい話とか、Mr.も、処方された薬の内容を、あまり知らずに半年くらい飲んでいたり、とか、自分は詳しくない世界ではあったのだけど、それでも、考えたら、私も介護を続けて、病院に通い続けてきた時間もあったのだから、あまり安直に比較してはいけないのだけど、話の内容は、時々、かなり親近感がわくものでもあった。有意義な時間だった。いったん会場を出たが、無料でトークを聞かせてもらったので、Mr.の映画のパンフレットと「派手な看護婦」氏の本を買った。

 「めんたーる すけっち もぢゅふぁいど」というサブタイトルは宮沢賢治の作品のタイトルか何からしいが、恥ずかしながら、初めて知った。

 

 

(2015年の時の記録です。多少の加筆・訂正はしています)

 

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