2005年10月14日。
絵が、どれも、湿気が少なく感じ、怨念とか執念とか、そういうものと遠そうで、楽しんで描いている感じがした。
それに、決して、すごくうまい感じもしない。
一つの作品を仕上げる時の、習作というスケッチも、「こういうポーズがかっこいいかな?」というような冷静な検討に見える。その結果としてなのか、出てくる人物は、どれもドラマチックな場面なはずなのに、感情があふれているようには思えなかった。大事なのは、その場面の形のかっこよさ、と作者が思っているせいかもしれなかった。オタク的な美学と近いかもしれないし、見ていると、思った以上に身近な感じがしたのが、意外だったし、見てよかった、と思えた。
出現というサロメの一場面で、首が浮いている絵が、その中でも、自分にとってはよかった。
特に、晩年になってから、一度は完成している絵に、輪郭のように、背景の絵を細密にしてみたり、人物も細かくしてみたり、それも描き直すというのではなく、輪郭だけ、白いような線で、上から描き加えている。
どうして、こういうことをしたんだろう?そういうことを考えさせてくれたり、を含めて、とても現代な人という感じがした。
軽み、というものが、全体にある。
それから、渋谷の雑居ビルの上の狭いカフェへ行った。「ハナコ」で見た。居心地がよかった。
(2005年の時の記録です。多少の加筆・修正をしています)。
「ギュスターヴ・モローの世界」(新人物往来社)