アート観客   since 1996

1996年からアートを観客として見てきました。その記録を書いていきたいと思います。

「ゲンロン カオスラウンジ 新芸術校 上級コース成果展」。2017.2.25~2.26。五反田カオスラウンジアトリエ。

「ゲンロン カオスラウンジ 新芸術校 上級コース成果展」。2017.2.25~2.26。五反田カオスラウンジアトリエ。

2017年2月26日。

 ワークショップが五反田だった。そのあとに寄れる時間があった。歩いて、中に入る。この2カ月で何回か来た場所。来るたびに、それほど広いスペースではないのに、違う場所のように変っている。

 

 それで、入った瞬間に感心して、無料なのに入場券があって、渡された裏には、160の数字。2日間の開催で、この人数が来た、ということになるのだろう。作品が並んでいて、映像がよく分からない。コスプレで新宿を歩いていて、その本人がそばにいて、その映像を見ている姿をじっと見られているけど、聞けなかったが、あとになって、ここに川があって、そこにそって歩いている、ということや、どうやら身投げをした遊女のことらしいとか、いろいろな意味があることを知って、見え方や、印象そのものが変っていたりする。金藤みなみ。どうやら、西巣鴨のお寺でも作品があって、迷って、結局は行かなかったけれど、その展示はすごくよかったらしく、こうして書いていても、後悔はある。

 

 会場を見て、和田唯奈のきらきらした作品が際立って見えた。奥の、大きい絵が誰が描いたか分からないのに、怨念みたいなものは確かに感じ、その階だけでなく、上の階まで使った展示だった。上の階。その一角は、和田が、他の人の描きたいであろう絵を自分で描いた、という、考えたら、恐ろしい技術だったが、それよりも、その奥にある絵が気になった。大きい絵。デッサンが少し狂ったような、家族の、でも集まった感じではない絵。全面に散らばっている何かの破片。不吉さはあるけれど、全体的には平凡といってもいい場面。ただ、密度や濃度が強くて、目が離せない絵だった。

 

 なんだかすごいと思って、しばらく見ていて、立ち去ろうとした時に、その絵の前にやってきた男性が話を始めた。どうやら作者だった。この絵は、写真をもとにしているらしい。この作者もここにいて、中にいる背を向けている小学生の男の子。母親らしき女性が赤ちゃんを抱いている。その下には、やはり、そこから去ろうとしている女の子。この絵は、家族が集まって、撮影しているのは父親。そして、きちんと集合写真らしきもののあとに、どうやら連写していたらしく、その直後に、すでにみんながあちこちに去ろうとしていた、そんな瞬間が残っていて、その写真を元にしている、という。ただ、その後、そこに写っているクルマ(ソアラ、作者は嫌いだったという。その中にある芳香剤の匂いも含めて)で事故にあって、そのことの影響で(こんな軽い言葉ではないけど)母親は自殺をしてしまい、妹はうつで苦しみ、赤ちゃんである弟にもいろいろあって今は絶縁状態で、この家には、今は妹が1人で住んでいる、という話。家族が事故によって、壊れていく、その一瞬前の記録、といっていいもので、そこに飛び散っている破片は、見ていないのに、想像して描いたクルマの事故の時。母親が音楽療法士をしていて、その商売道具も一緒に飛び散った姿まで描いた、という。

 

 作者の話し方にも不思議な力があった。すごかった。下にある奥にあった絵は、事故の瞬間を想像して描いた絵だという。作者に御礼を言った。こんな風に描いたのも辛そうだけど、話もきちんと伝えてくれて、感謝の思いを述べた。また下の絵を再び見た。確かに事故の絵だった。でも、その車体から得体の知れないものがあふれだし、噴き出していた。すごい絵だった。シールも貼った。弓指寛治、という作者だった。次のグループ展も見たいと思った。来てよかった。

 

 

(2017年の時の記録です。多少の加筆・修正をしています)。

 

amzn.to

 

amzn.to