2015年5月23日。
全く予定になかったけど、ユニクロに寄って、そこから歩いていて、確か資生堂ギャラリーがあったと思って、歩いたら、見たいと思える展覧会をやっていた。赤瀬川さんは、去年亡くなっている。この展覧会は、このメンバーで2013年に始めて3回目ということらしいと、受付で初めて知ったが、これまで知らないままで、残念だった。このギャラリーは作りもきれいだし、入るだけで、階段の配置とか、ちょっとワクワクする場所で、入ってから、すぐに赤瀬川の作品が並んでいた。雑誌かなにかの連載で、絵日記風の原稿らしいが、こうやって並んでいると、全体を見たり、絵を見たりはするものの、文章を丁寧に読めないが、それは自分だけかもしれないから、何ともいえない。そこから階段を降りる。この細い階段は、上がって来る人がいたら、すれ違えないくらいだけど、地下へ向かって、少し違う場所へ行く、という気持ちが自然に高まるような作りになっていると思う。
床に映像作品がある。動いていて、その4隅も映像でカットされているようになって、それがさらに動く。映っているのは、お堀の映像らしいが、ゴミや何かの死体のようなものまでがある。変な迫力。伊藤存の作品。伊藤は、都内の公園で、「みえない土地の建築物」というテーマで、3月や、9月に銀座界隈で採取した「いきものの形」を大きい立体に刺しゅうしてある作品が、会場の主に2カ所に並んでいる。
受付で注意をしてもらったのは、内藤礼の作品だった。天井からぶらさがるヒモだったり、去年、庭園美術館で見た人でもあった。そこに気をつけてください、といったことだった。そして、そのヒモと思ったのは、糸がわっかを作って連なるもので、その分かりにくい手間ひまのかけかたに、なんだか想像力が自然と動く。目の前にあるものだけでなく、その作業が抽象的に、作業というよりも意図かもしれないけれど、浮かんでくる。もらったリーフレットには、“一本の糸をくさり編みにすることは「何かを少し強める」ことだと内藤はいう”とあって、自分でもどこかで使いたくなるような、だけど、そこにはウソのない正確さがある。すごい。
青木陵子の作品は壁に広がっていて、これまでのものより、色彩が増えたせいか、それだけでなく、大胆になった、というか、怖がらなくなったような感じがして、豊かな印象が強くなっていた。しばらく見ていられる。
畠山直哉の写真は、大きい岩が写っている。何か分からないけど、風景の中で不自然なほど強い存在に見える。タイトルは「漂石」。2万5千年前の氷河の拡大に伴って、遠くの山から運ばれてきた巨大石のこと。ドイツの各地に存在するものを撮影したシリーズ。こんな石があるのも初めて知った。そして、それを知ると、時間とか、地球とか、その証拠がここにあるような気がしてくる。なんだか凄いのだけは伝わる。
あいかわらず、来るとはずれがないギャラリーだった。
(2015年の時の記録です。多少の加筆・修正をしています)。