アート観客   since 1996

1996年からアートを観客として見てきました。その記録を書いていきたいと思います。

「ゲルハルト・リヒター。アトラス」。2001.3.31~5.27。川村記念美術館。

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ゲルハルト・リヒター。アトラス」。2001.3.31~5.27。
川村記念美術館

 

2001年5月27日。

 

 今回は、初めてバスツアーで出掛けた。

 ここの美術館は、とても遠く、そして旅費もかかり、その上、帰りの電車が短くない時間なのに座れないことも多く、しんどいイメージがあるので、たまには人任せの旅というのをやってみたかった。それは、この初めての大規模なリヒターの個展と千葉市立美術館のミニマルアートのテーマのどちらもが魅力的だったことが一番大きい。二つの美術館を1日で回るコース。でも、どちらも2時間くらいの時間が予定されていると聞いて、行こうと思った。そして、電話で予約した。その前日にしようと思ったが、学校のツアーが入ったとかで、「補助席でいいですか」と言われる。だから、リヒター展の最終日のこの日にした。

 

 朝10時に丸の内、新丸ビルディングの前に集合。何日か前からその早起きに緊張していた。それにその場所になじみがない。バリバリのビジネスゾーン。そういえば、最近、母の昔話を意識して聞いていく中で、丸ビルの中の会社に勤めていたのよ。ということをよく聞いていた。

 

 雨混じりの天気。

 その場所は、何台かのバスが止まっている。ここは、そういうところのようだ。青いバスにはリヒターの文字。バスの中で待っていると、人がたくさん来た。思ったよりも多い。そのうち、ほとんどいっぱいになる。キャンセル待ちまでいる。それもほとんどが若い人達ばかり。

 

 妻と2人で何となくはしゃいでいる。誰かが、遅れている。もう10分くらいたった。もう出発しちゃえば、いいのに。そう思っていた。そこへ、一人、中年男性が、やってきた。全然、悪びれていない。

 とにかく出発。

 バスは都心を走る。日曜日だから、人は少ない。

 千葉の方面へ行く。混んでるかと思ったが、舞浜もそれほど時間かからずに過ぎた。あまり寝てないのに、それほど眠くない。何となく、うきうき。道路を通って、川村美術館へ行くのは初めてだった。途中で、持って言ったウォークマンでラジオを2人で聞いたりすると旅な感じだった。そうこうするうちに、1時間くらいたつと、美術館に着いた。

 

 そこのレストランでも食事が出来るらしいが、とにかく美術館へ行った。

 リヒターの作品は、常設展の1階を見て、2階に行って初めて出てきた。

 作品は9点。

 写真を絵画にして少しぴんぼけになったようなのは2点。それも1点は、すでになかった。

 

 それから、色見本を焼き物にしたようなもの。ものすごく荒いタッチでありながらもその一つ一つの線が計算されつくしたように見える山の絵。抽象絵画も同様な印象。ガラス板の後ろにただグレーのシートをはっただけの作品。ものすごく不吉な感じの花の絵。壁という名前のついた向こうから光りの射すような絵。

 

 そして、ものすごく膨大な量の写真。それも、ほとんど感情のこもっていないものばかり。すべては素材でしかないような。自分の奥さんや子供の写真でもそれは変わらない。

 だから、絵も、感情を排するというのも、リヒターにとっては、わりと自然なことなのかもしれない、と思わせる写真の数々。

 

 百科事典から選ばれた偉人の顔写真を絵に描き、それを発表して、それをさらに写真にとって展示されている作品。そのだんだん遠くなる距離感みたいなものは確かに現代ではあるけれど、感情の否定の方向、でもリアルには違いなく、好きという感情はわきにくいとは思う。でも、相変わらずの頭の良さ、それも圧倒的な良さみたいなものは確かに感じる。

 

 ものすごい量の写真。

 美術館を出たら、たぶん2時間はたっていた。

 このバスツアーでは3時間の予定だったが、最初は多いと思っていたが、見終ると妥当な時間、というかもう少しあれば常設のロスコルームへ行って、少しボッーとしてこられるのに、とも思った。食事は、買っていったおにぎりや弁当を休憩所で食べた。

 

 もう、出る時間ですよ。

 そんな感じでバスに戻る。最初の席に戻ったら、置いてあったゴミがなくなっていた。バスが出る時、美術館の関係者があいさつに来た。たぶん、このツアーは好評だったんだろう。ただ、料金、一人3700円は、走っている時に集めても良かったかな、と思った。それで降りるまでに、時間がかかったのだから。ただ、補助席までつかっていたから、かもしれないけれど、でも補助席まで使うほど割安ではない、とも思う。

 

 バスが出発する。

 席が微妙に変わっていた。

 次は、千葉市立美術館だ。

 まだ、楽しい気持ちは続いている。

 

 

(2001年の時の記録です。多少の加筆・修正をしています)。

 

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