アート観客   since 1996

1996年からアートを観客として見てきました。その記録を書いていきたいと思います。

MOTアニュアル2004 「私はどこから来たのか/そしてどこへ行くのか」。2004.1.17~3.21。東京都現代美術館。

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MOTアニュアル2004 「私はどこから来たのか/そしてどこへ行くのか」。2004.1.17~3.21。東京都現代美術館

 

2004年2月25日。

 

 今日は義姉が来てくれて、義母をみてくれるので、おかげで妻と一緒に出かけられた。

 午前11時40分頃に出発。12時40分、東京発のバスに乗る。この路線にもかなり慣れた。

 久しぶりの現代美術館。最初にショップを少し見て、それからレストランで食事。1000円の弁当は売り切れ。1000円の今日の肉料理と、妻はたらこのパスタ900円。それぞれに250円のセットをつけたら、サラダとパン、もしくはご飯がついた。コーヒーもついていた。かなりゆったりできた。けっこうおいしかった。2人でそれで2500円くらいだから、かなりよかった。そして、午後2時30分になっていた。

 

 それから、展覧会へ。

 最初は、北島敬三の作品。2枚の男性の写真。並んでいて、兄弟かと思ったら、解説を読んだら、同じ人物を10年以上にわたって撮ってきたものだという。10年くらい、と思いつつ、やっぱり確実に老けるものだ、と思って、何だか年をとるということが、ここにあるような気もしてきた。何人もが並んでいる。アトランダムのようだが、出来れば、同じ人物をそのまま並べたら、とも思ったが、それは1人の人物でやっているので、後はいいのかも、などと思った。

 

 次が、内海聖史の絵。最初は、高い天井へ伸びるように縦に大きい絵。こもれびのような緑の点の集まりのような作品。その次は、大きな部屋にわざと小部屋を作って、その部屋に斜めにぴったりと置いてある横に広がる絵。これが、眼前の黒と名付けられ、やっぱりこもれび。だけど、確かに黒っぽい作品。そして、次は壁のやや高めの位置に10センチ四方くらいの小さい絵。こういうのを見ると、ああ美術館という場所でしか出来ないかも、という気持ちに不思議となるのだった。妻は、この日、この企画では、この絵を一番気にいっていた。 

 

 次の部屋は磯山智之という人の作品。オレンジキャンディーの、いろいろな国のキャンディーが並んでいる。キャンディー、キャンディーの包装、さらにその商品として売っている時の袋など。それが部屋の真ん中に置かれたキャンディーを粉状にして小さな瓶にして並べてあるのと、同じように並べてあると気がついたが、ちょっと嬉しくなった。各国の辞書に載っているようなイラストを集めたり、ラッキーチャームを写真でまんだらを作ったりと、何だかやってみたいことをやっているのだった。

 

 奥井ゆみ子。人が行き交う場所をぼんやりと描いたちょっといい感じの絵。だけど、杉戸洋をやたらと思い出し、そのことが気になってしまう。

 小瀬村真美。腐っていく静物画のように置かれた果実など。それを早くしているような映像は、8分くらいだったが、なぜか、ずっと見てしまう。

 山口晃。特にすずしろ日記というものは、明治の頃の随筆みたいで妙な味わいがあって、それも屏風の形式だが、思ったより、細部も見てしまい、面白いと思った。

 中ザワヒデキ。現代美術史日本編を執筆するらしいが、その見本の本が並べてある。まだ、全部できてない。こういうのもありか?と思ったが、前から欲しかった手書きの「近代美術史テキスト」を500円で買った。これからの「現代美術史日本編」は、発売されたら買いたい。

 

 その後が三浦淳子という人の作品。映像。1時間くらいのものだから、何だかこれからのことが気になって、あんまり集中できなかった。ナレーションの言葉使いが、少し重かった。だけど、その中で「孤独の輪郭」というのがあり、放送局の局長になったという幻想を抱き、毎日放送する1人暮しの祖母の姿を追うというもので、何だか文でちょっと読んだだけで、すでにつらくなった。日本人の壮年期以後の長い人生の孤独をドキュメンタリーにおさめてきた作家と知る。

 

 この展覧会は、見終った後、何だかじわじわと考えた。

 生きたり、死んだりというよりも、老いるとかいうもの。だけど、それは、いつも日々の中で接していて、改めて考えたくなくなっているのかも、などと思った。

 

 今回は、常設も見ることができた。

 最初は、軽くみよう、などと思ったが、最初に柳幸典の円がマークが鏡でがーっと並んでいる、見たことのないその部屋に入るような作品があって、見てよかった、と思ってしまった。舟越桂大江健三郎の小説の挿し絵もあって、やはりかっこよかった。

 

 気持ちが少しのってきたので、何度か見たはずのリヒターのエリザベート。それに、マレルネ・デュマスのどろどろしたものや、キーファーの絵などが並んでいて、私にとってはとてもよかったりして、池田満寿夫の初期の作品はホントにいいと思えた。その隣の草間弥生の「自殺した私」も、実物の方がよかった。それでも30分足らずで常設展を見たから、いつもよりも早かったが、何だかとっても贅沢な気持ちがして、充実した気持ちになれた。それからカフェテリアでケーキとアイスとコーヒーを飲んで、帰った。午後7時くらいになった。久しぶりに嬉しかった。妻と一緒に行けて、よかった。

 

 

(2004年の時の記録です。多少の加筆・修正をしています)。

 

www.mot-art-museum.jp