1997年1月
名前のインパクト。
それが、その人の作品より印象が強く思えることがある。
竹久夢二。
その絵に対する好みがあるから何ともいえないにしても、名前だけ聞いていて作品を見る前に膨らませていた期待以上のものにはどうしても思えなかった。もしかしたら、ホントにいい作品を見ていないのかもしれないし、自分の理解が届いていないだけかもしれないけれど。
そんなに映画に詳しくないし、パルプ フィクションをビデオを見ただけでそれはおもしろかったけれど、この人の名前のインパクトも強いと思う。
ディヴィット・リンチ。
この名前もたぶん聞いたら忘れにくい。例えば、エレファントマンの妙にざらついた印象の強い画面は確かに凄い気もする。イレイザーヘッドを見ている途中で眠くなったせいだけでなく、マニアックに注目を集めやすいのは名前の響きを無視できないように思える、例えば、ピーター・スミスだったらどうだろうか?
ディヴィット・リンチ展。DREAMS.
パルコのギャラリーでやっていた。小規模な会場をカーテンでさらに細かく仕切り、写真や絵画が並んでいる。その絵はざらついて灰色でごちゃごちゃでクールで気持悪さが妙に心地よい。ちょうどいい荒み。もっと理知的になるとジャコメッティの静物画みたいになるように見える。思った以上に良くて結構長い時間、その妙に黒っぽい画面を見ていた。
「リンチは、今回出品される絵画やドローイングの手法を自らブラインド・ペインティングと呼んでいる。それは、キャンパスの前で目を閉じて彼自身の無意識と夢の構造を浮かび上がらせ、作品としていくという瞑想的な表現方法をとっている。彼自身が構築した世界さえも脱構築し、創造的破壊を試み、彼の内的な精神状況と時代精神を作品が割れた鏡のように反映していく」。
こうしたチラシの言葉はハッタリが効き過ぎているのでは、とも思うけれど、その絵画が良かったという印象は変わらない。
(1997年の時の記録です。多少の加筆・修正をしています)。