2018年5月30日。
つい何日か前にツイッターで見つけて、先着順ということで、夜になって出かける。本を読み、その写真が面白くて、見たいと思って、雨が降る中を移動する。アプリコという施設。大田区の立派なホールで、いろいろなイベントに使われていて、時々、講演で来たりするが、こういう施設は、もう少し有効な活用方法もあるんだろうな、と思いながらも、中に入るまでは、ただ静かな場所。ホールは100人くらいは入る場所で、立派な壇上に人が並んでいて、今回の景観まちづくり賞の受賞者の方々で、政治的な話ばかりかと思っていたら、中の1人は、わりと近所で、その上、音楽家でもあって、ご近所のためもあり、コンサートを開いたりしている、といったようなことを話されていて、そんなことがあるのか、と思ったり、他にも近所の方々が受賞をしていて、それも高級住宅街といっていい場所だったのだけど、いろいろと大変そうなんだな、というのは少し伝わってきて、ただ立派で、金持ちで、だけではないのは、すこし分かったようにも思えた。
休憩をはさんで、大山顕氏の講演。メガネをかけて、話し慣れた様子。
話が始まり、最初の写真が写ってから、もう面白かった。工場地帯に育ったせいもあったのか、そういう場所が好きだというような大山氏は、次々と写真を見せてくれたが、どれも魅力的だった。
それと同時に、大山氏は団地も撮って来た。
この写真たちは、私にも縁があった。社宅の子として育って、それは今振り返ると不思議な場所でもあったのだけど、工場があって、小高い山の上に鉄筋のアパートが並び、全部が社員。だけど、そこに、今見ている団地たちのように愛着を持てなかった。今でもたまに電車の中から見ることはあるけど、それほどの気持ちにはなれない。子ども時代に遊んだ場所とか、意図しないようなすきまみたいなところには、萌えみたいな気持ちになるけど、全体にはないのは、ちょっと不思議でもあった。
一般的には、上空からの撮影が多いのだけど、自分は違う、と大山氏は言う。あくまでも「下から」だと。その中で、麻布十番は、駅を出たところにジャンクションがあって、そこの中で祭りまでやっていて、それまであまりよく思っていなかったのだけど、好感が持てるようになった。それから、ゴルフうちっぱなし。変電所。立体駐車場。高架下建造物、と次々と映像が変わり、どれも、とても面白く、その共通したものとして、「ままならなさ」というキーワードを提示してくれた。それは、土地にしても、どうしようもない前提条件があって、そこにどう折り合いをつけるか、といったこと。工場であれば、どうしても、機能優先になっていて、見た目、があとになっている感じだったり、無理目な土地に立てた団地とか、そういったことがグッと来るのだ、という話。
興味にまっすぐ向かい合った蓄積のすごみ。
そんなことを思って、すごく楽しい気持ちにもなった。そうした、こういう面白いところもありますよ、だけでなく、日本橋の開発について、あそこの首都高速を地下に、といっているのだけど、今、ああだから、かっこいい。なぜかといえば、橋は1600年くらいとして、その下の川は、江戸時代に出来た水路。つまりは、首都高速みたいなもの。そのうえに首都高速が走っていて、地下には地下鉄まで走っている。こんな奇跡的な場所はない。もし、地下に首都高を走らせるとしても、大事にしてくれ。それに、空を取り戻せ、というのだったら、首都高の上に太鼓橋をかければいい。そうやって、上に重ねていくのが筋ではないか、という主張。すばらしい。山口晃の絵に既に実現されているという指摘。すごい。
他にも、地形を生かしたものの多さ。制約をなんとかしていく場所がとても多い、という事実。田園調布でさえも、放射状は地形を生かしている、という話。光が丘の広い駅前からの道は、昔は飛行場だった、という話。ある団地の丸い微妙なくぼちは、その昔、野球場だったと言う話。大森のテニスクラブは、細長い窪地で、昔、射撃場で、その碑まであるという事実。
最高だった。
気持ちが盛り上がって、質問までしてしまった。
社宅に育って、愛着がそれほどでもないのは、社宅であるので、カスタマイズが難しいことがあるかもしれない、団地によっても、違いがありますか?と聞くと、URと都営は違う。やはり、都営のほうがおもしろい。勝手に花壇とかを作ってしまうし。そんな答えをしてくれた。