2017年9月12日。
雑誌で見た異様な外観。うそみたいな建物。一度は行ってみたいと思ったけど、そして岐阜県という場所に子供時代の4年間住んでいて、だから、多治見という場所にも耳なじみがあったりもしたが、介護をしている今では、何しろ旅行はぜいたくな事だった。
家を空けるにはショートステイをとって、いろいろな予約をするだけでもなく、そのショートステイの間に毎日妻は義母を見に行っていて、今は1日でも誰も行かない日を作るのが恐くなっていて、だからその日に誰かに行ってもらうような約束をして、さらには旅行の資金があって、始めて実現できるからたかだか一泊2日の旅行であっても、そういった周辺のことをすべてクリアしないとダメだから、本当にぜいたくなことになるのだけど、それが、今回は奈良美智の大規模な個展が豊田市で行なわれることが決まった。その日程を見て、ショートステイをいろいろととって、それでも、今回はいろいろと全部がクリアできて、行けることになり、それならばその前日にもしかしたら、と思って調べたら、その日にショートステイの場所に妻が行ってから、新幹線に乗って、それから名古屋で降りて乗り換えて、さらにバスに乗っても「モザイクタイルミュージアム」に間に合うということが分かって、妻と相談して行くことにした。
前の日あたりは、ショートステイをとって、そして仕事の報告書もできていなくて、もう少し休むためにしたらよかったよな、などと軽い後悔もあったけれど、起きたら旅行へ行けるのは、少しうれしく、今日はうまく多治見で降りて予定通りに行けるだろうか、というようなことが不安になり、午後2時のバスに乗れると思っていたら、その土地の名物みたいなカフェがあったり、といったことをインターネットで知ったけど、実際に、名古屋で乗り換えた。電車は、だんだんと山の方に進んで行って、そうしたら、予想もしなかったなつかしさがわきおこってきて、だけど、多治見駅に着いたら思ったよりも都会だったし、そして留守番電話を聞いたら、こういう時に限って伝言が入っていて、そこで問い合わせもして、そんなことをしていたら、次のバスの発車時刻までの30分があっというまにたっていて、そしてバスに乗ったら、狭い道を走って、あちこちに思った以上に古い看板のある喫茶店があって、それが意外だったけれど、そういう場所は必要なんだ、ということを改めて考えて、そのうちに、本当にあのうそみたいな「モザイクタイルミュージアム」の建物があらわれて、それだけできてよかったと思えた。
平日なのに、そこで若い女性も降りて、そこへ向かっていった、そして先客も何人もいた。周囲の空間も含めて、楽園みたいだった。建物が土で出来ていて、植物が植わっていて、中へ入っても、一番上にタイルの部屋があって、空へ向けていて、それも期待通りの建物だったけど、中に流れる音楽がない方がよかった、と思ったが、だけど、妻も喜んでいたし、写真も撮っていたし、その中のタイルのこともいろいろと分かって、この地域がタイルによって産業としてということも知って、その中がとても快適でさらにはワークショップでタイルをはって小物を作って、あとは中にカフェでもあればいいなあ、と思ったが、とても楽しい時間だった。そのあと、また留守番電話に伝言が入っていて、どうしてこんな時になどとも思ったが、バスで駅に着いて一応の解決はして、それから名古屋へ向かった。
帰りは各駅停車で、行きはとばした駅に止まっていく。誰が降りるのだろう、と思うような川のそばの駅。緑がうっそうとしていて、川が流れていて、何もない、という印象が強くなるような場所。ああ、こういうところで暮らしたことがあった、というなつかしさがまたわいて、そして、名古屋に近づくと明らかに都会になってきて、そんなような変化は明らかにあるのだけど、そして、田舎といわれるような場所は、今も、あれから40年くらいたつのに、そんなに変っていないのではないか、というようなことも思った。
(2017年の時の記録です。多少の加筆・修正をしています)。