アート観客   since 1996

1996年からアートを観客として見てきました。その記録を書いていきたいと思います。

『ヒトラー、最後の20000年 〜ほとんど何もない〜』。作・演出ケラリーノ・サンドロヴィッチ。2016.7.24~8.21。下北沢 本多劇場。

ヒトラー、最後の20000年 〜ほとんど何もない〜』。作・演出:ケラリーノ・サンドロヴィッチ。2016.7.24~8.21。下北沢 本多劇場

2016年7月28日。

 ゲンロンカフェで、平田オリザトークショーを聞き、演劇のことを考え、すごいと思い、その話の中で、わたしが今、もっとも信頼している、ということで何度も名前が出たのがケラリーノ・サンドロヴィッチで、にとっては、バンドのボーカルでビジュアル系の人で、そのあとに太ってしまった人という感じだったし、名前がふざけているので、そういう人かと思ったりもして、だけど、そのトークショーの次のシリーズが、そのケラリーノだったので、さらには、その演劇をやるというので、その作品と、トークショーの両方に申し込んだ。

 

 今日の演劇の料金が、7400円。

 自分にとっては、すごく高い、という気持ちだったけど、平田オリザの話がすごいという気持ちのまま、申し込んだのが、6月くらいだったから、まだ先、まだ先のこと、と思っているうちに、この日になった。義母がショートステイから帰って来て、いろいろと支度をして、それを手伝ってから、バタバタと出かける。

 

 下北沢の駅で降りて、あれこれ歩いて、そして本多劇場に着いて、その階段を上る。初めて来たような気がする。アートの場所とまた違う人たちが集まっている。もっと独特と言うか、やはり自意識がさらに強い感じがある。ロビーのソファーに座っている中年の男女も、妙な迫力があって、例えば表参道といった場所とはまた違う気配を持っていて、タダモノじゃないのは分かる。演劇関係者がけっこうたくさんいるのだろうと思ったりもして、だけど、席は一番後ろのほうで、端っこでいつでもトイレに行けるようにと思った場所だけど、そこに座ると、300人とか400人とかが、けっこうな値段のお金を払って、見にきているというのは、改めてすごいと思った。

 

 隣は、レースのスカートの女性。始まる前には、私ももらったとても厚いチラシのたばをモモの上にきちんと両手で持って、開始を待っていた。関係者かもしれない、少なくとも俳優を目指した時期は間違いなくありそうな人にも見えた。少し前に、ロビーのソファーに小さめの少しスタイリッシュな皮の薄いカバンに、この劇のカタログ(1800円)を、そーっと丁寧に大事そうに入れていた、隣には、やはり細めのシルエットでまとめた関係者らしき男性がいた。

 

 演劇でしか出来ない事。客席まで効果的に使うこと。そして、笑っちゃいけないものはない、という言葉通りの演劇だった。ヒトラー、アンネフランク、実際の映像まで使って、笑いをとる。ストーリーはない。正直そんなに笑えないところも多く、隣の女性はよく笑っていて、キレイな声というか、通る声だな、と思いながらも、途中でちょっと寝そうになった時もあったものの、最後まで本当にくだらないことを、大真面目に演じ通して、舞台を支えていた古田新太は、ほとんどブリーフ一枚にコートという格好のままだったけど、なんだかすごかった。

 

 2時間20分。トイレに行きたいような気持ちもあったけど、この席からトイレに行くには、大変そうだったので、と思っているうちに時間が過ぎた。次は、シリアスなものも見たい気持ちになった。その前にゲンロンカフェでのトークショーが楽しみにもなって、平田オリザの時も思ったが、やはり最新作を見ておくと、トークの理解力が上がる気がして、それも含めて見てよかったと思えた。プロの仕事だった。

 

 

 

ヒトラー、最後の20000年〜ほとんど何もない〜』(DV D)

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