アート観客   since 1996

1996年からアートを観客として見てきました。その記録を書いていきたいと思います。

「暗愚小傳」。青年団第73回公演 作・演出:平田オリザ。2014.10.17~10.27。吉祥寺シアター。

「暗愚小傳」。青年団第73回公演 作・演出:平田オリザ。2014.10.17~10.27。吉祥寺シアター

 

2014年10月17日。

 知り合いが女優になる、といって学校をやめ、何回か、その演劇を見せてもらったのだけど、演劇って何だろう?みたいな気持ちになってきて、そして、一度は見たいと思っていた平田オリザの舞台は、なかなか日程がなくて、今回は初めて見られた。

 

 ロボットを使っている最新の演劇も見たかったけど、最初はもっとオーソドックスなものから、と思い、申し込んだ。大人4000円。自分にとっては、高い。高いけど、見たい。吉祥寺シアターという行った事がない場所。夜7時半からのスタート。吉祥寺駅から徒歩5分というので、歩いて、このへんかな、と曲がって、さらに歩くと、夜の気配だけが濃くなってきて、人通りが少なくなってきて、おかしいなあ、とか初めての場所に来た心細さだけが強くなってきた。地図を見たら、かなり通り過ぎていた。わりと大きい通りを少し曲がったら、建物に嫌というほど「吉祥寺シアター」と書いてあった。こんな大きいのに気がつかないことに、自分であきれる。

 

 入ったら、人が並んでいた。自分の番号が11で、入ったらすぐに呼ばれた。けっこう立派な劇場。台の上にテーブルとイスが並んでいるだけのシンプルな舞台。客層の年齢層は、かなり高い。このところ行っていた演劇と、能楽の舞台の中間くらいの感じの客層。

 

 そっと舞台が始まる。

 大学生の時に書いた脚本だという。出て来ているのは高村光太郎。そして永井荷風。その他、戦前から戦中、戦後までの話だった。

 

 人がしゃべっているけど、演技じゃないみたいに、だんだん自然になってきている。そして、役者が何人か舞台にいて、テーブルを囲んで座ると、客席に後ろ向きになる人が普通にいる。考えたら、これは普通に背中での演技というよりは、全体で演技をし続けて、そこにいる人達の濃度がずっと同じ、というような感じで、何人かいると、考えたら当たり前のことだけど、会話ってあちこちで起こったりして、かぶったりするのが当たり前で、それでいて、全体が静かなので「静かな演劇」と言われてるらしいことをチラシなどで見て初めて知った。

 

 なんともない会話が続く。世間話という、一番残らないものを再現しているような気もして来て、それでいて、時々、そこにいた人が1人いなくなり、残った二人で、そのいなくなった人の事を、語りのトーンが変わって、さらに続けていたりと、なんだか微妙な変化があって、途中でちょっと眠くなったりもしたが、終ったら2時間がたっていた。静かな時間だった。いろいろな事を考えていたような気もするけど、かなり早くも感じて不思議でもあった。

 

 終った後、平田オリザが1人で出て来て、アフタートークをする。今までの舞台の続きのようなトーンと気配。その中で、オリザが本名だったり、高村光太郎と、平田オリザの祖父に関係していて、それも戦意高揚にからんでいるので、血筋を信じていないけど自分もそうなってしまうかもしれないという恐怖があってこの演劇を再演している、ということ。それに、高村光太郎はヨーロッパへのコンプレックスがあり、渡欧し、そのあとは国粋主義者のようになり、戦後はまた欧米化へ向かうという典型として描いた、という話を聞いて、ものすごく冷静で、恐さまである人だと思った。

 今度は、ロボットを使った演劇も見たいと思えた。

 

 

amzn.to

 

青年団

http://www.seinendan.org/hirata-oriza