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1996年からアートを観客として見てきました。その記録を書いていきたいと思います。

青年団 第79回公演「日本文学盛衰史」。2018.6.7~7.9。吉祥寺シアター。

青年団 第79回公演「日本文学盛衰史」。2018.6.7~7.9。
吉祥寺シアター

 

2018年6月8日。

 佐々木敦ツイッターで知って、原作の高橋源一郎の「日本文学盛衰史」を読んで、高橋源一郎という小説家が自分にすごく向いた題材を改めて発見して、すごく生き生きと書いていて、若返った、といった印象があり、そして、こういうこともできるんだ、とすごく勇気づけられた記憶があった。

 

 その小説を原作として平田オリザが演劇にする、ということだったので、特に演劇マニアでも演劇ファンでもないのだけど、平田オリザの本を読み、こんなに揺るぎなく頭がいい人がいるのかと感心し、ゲンロンカフェにトークを見に行ったら、話しても揺るぎなく頭がいいので、すごいと思い、平田オリザの演劇も見に行って、その時はアフタートークも含めて、すごい事言うよなあ、といったようなことを思った。自分の演劇の評価について、“100年、世界中”ということを言いきれる、というようなすごさもあって、気になり続けていた。
 
 それで、今回は原作が気になっていて、しかも、それから10年以上がたって、今この時に演劇にする、というのは、どうするのだろう。あの小説は、いろいろなことを入れて、それで作品として成立させて、たまごっちとか、そういえば、高橋自身のレントゲン写真まであったけれど、明治の頃、自分のことだけでなく、日本の国の文学をどうしていくか、日本語をどうしていくか、といったことを、関係者がみんなで本気で考えていて、そこには志があったのは伝わってきて、それは、どんな状況でも可能ではないか、といったことを感じた。
 
 吉祥寺シアターに行き、着替えをしたりして、演劇が始まって、あの原作をどうするのか、と思っていたら、パンフレットを読んで、分かっていたつもりだったのだけど、葬式を舞台にした、ということが、すごい設定だと改めて思った。重要人物が、一同に集まっても、不自然ではない。しかも、これは誰の役だろう、と思っていると、劇の中で、この人は、と紹介されるのは、葬儀の場だから、自然になっているし、そして、あちこちで時事ネタがあって、笑えるものあるが、周囲の方々ほど笑えないのもあったが、明治の時代に、国と言葉、国と文学のことを、よりよき方へ導いていく志があって、そのことは伝わってきたし、どこか勉強のように見ていたような気がしていたけど、今回はわりと素直に面白く見ることが出来た。2時間以上たったのだが、途中でまだ続くんだとも思ったのだけど、それからまた引き込まれるように見て、こういうような志を持って、仕事をしたいなと思ったり、面白かった。
 

 そのあとアフタートークになる。予定よりも、劇が長くなって、2時間20分だったので、残りは20分くらいだという話になった。少し話をして、その中で、時事ネタの事に触れ、一番最初の場内アナウンスで、「日本文学盛衰史」のタイトルを、「日本大学」と間違え、修正するという場面があったのだけど、それは意図的だったと知った。

 

 何人かの質問があって、真面目そうな若い女性が、国文学を学んでいますが、文学に未来はあるのでしょうか?という言葉に対して、平田オリザは、冷静に穏やかに、小説という形では難しいと思う。だけど、たとえば、親と子が、今日、こんなことがあったよ、といった形は残ると思うので、演劇は残ると思います。私は演劇が偉いと思っているので、という答え。なんだかすごい。

 

 そういえば、そのいくつか前の質問で、夢はなんですか?という質問に、日本人みんなが演劇をするようになること、と答えていて、見るのではなく、演劇をする、と答えるところが、相変わらずすごい。

 達人、ってやっぱりいるんだな、と思った。

 

 

 

 

 青年団 第79回公演「日本文学盛衰史」。吉祥寺シアター

https://www.musashino.or.jp/k_theatre/1002050/1003231/1004274.html

 

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