アート観客   since 1996

1996年からアートを観客として見てきました。その記録を書いていきたいと思います。

映画「アデル、ブルーは熱い色」。2014.9.20~9.26。キネカ大森。

映画「アデル、ブルーは熱い色」。2014.9.20~9.26。キネカ大森。

2014年9月26日。

 カンヌ映画祭でグランプリをとった映画ということで興味を持って、見たいと思っていて、今日が最終日で、どうしようか、と思っていたけど、妻と相談してでかけさせてもらうことにした。

 キネカ大森は、何度か通った。

 着いたら、もう開場していて、人が3分の一くらいは入っていた。意外といた。前に女性が座っていて、変に姿勢がいいから、頭が邪魔だなあ、というような事を思った。揺れる。

 

 映画が始まる。

 顔のアップ。1人の若い高校生の役の顔のアップ。信じられないくらい、それだけで時間が過ぎて行く。ずっと顔のアップなのに、だんだん引きこまれるのは、やっぱり若い女性だから見ていられる、ということなのだろうか、ただ、表情がものすごく豊かだった。だから、ずっと見ていられる。3時間の映画だから、途中でトイレにも行った。

 

 セックスのシーンはちゃんとしていて、AVのようだったが、これが、どうやら映画としては、問題となるくらいの過激さみたいだったが、何しろ、そのほとんどが主演女優のアップだったのに、そして、説明的な話がほとんどないままに淡々と時間が進んだ。
 
 そして、せっかく求め合うように付き合った二人がケンカをして別れてしまって、さらに知らないうちに時間がたって、最初は高校生だったのが20代の半ばくらいになっているらしく成長もしているが、それもはっきりと字幕が出るわけでもなく、音楽もほぼなく、それは、この主演の女優に感情移入が、自分と接点がないのに出来るのは、それだけ感情がうつってきているからで、その表情のリアルさとか、別れ方が切なかったり、またヨリを戻しそうで戻らなかったり、最後は別れた相手が画家として成功するオープングパーティーに行くのだけど、ただ所在なさげに少しいて、でも帰る。ああ、ドレスが青い。後ろ姿が遠くなっていって、あとで考えたら、この主人公が後ろ姿で、これだけ遠ざかるのは映画が始まってから初めてで、それで成長というか、もう違う時間、ということなのだろうけど、すごくさりげなく終ったようにも思った。

 不思議な印象だった。

 

 帰って来て、評論家の町山氏の解説を聞いた。反響があったのは、セックスシーンで、性器まで大写しになったり(ただ、それはプラスチックみたいなもので作ったらしのだけど)というようなことだったが、その不思議さは、何しろアップだけで3時間という事を言っていて、それに加えて、アデルというのは、主演の女優の本名に合わせて役名まで変えた。その方がリアルになるから。そして、3時間の映画に800時間も撮影して、それも、だいたいのシーンのストーリーはあるけど、あとは本人達に任せる、というようなやりかたをしていて、それは、町山氏が言うには、心の中まで全部出すようなやりかたで、ぼろぼろになり、もう2度とやりたくない、というような方法らしく、それは納得がいった。

 さらには、かなり計算された画面でもあり、どの場面にも青が入っている、という事はそこまでは気がつかなかった。

 作品だけでなく、主演女優の二人も、最高賞パルム・ドール賞を受賞したというから、それは、報われたということなのだろう。