アート観客   since 1996

1996年からアートを観客として見てきました。その記録を書いていきたいと思います。

映画「もらとりあむタマ子」。2013.1.6。渋谷シネパレス。

もらとりあむタマ子」サイト

https://www.bitters.co.jp/tamako/

 

2013年1月6日。

 年末年始にラジオの宇田丸さんの番組を聞いてから、見たいな、と思い続けいていた。最初に、妻に話をしたときには、まったく興味を持ってくれず、だけど、再び予告編を見てもらったら、正月らしい、と見に行くことになった。

 

 今年最初の映画。渋谷のセンター街のあたり。その近くのお店も調べて、ただ出かけたら時間が遅くなってチケットを買って座席を予約したら時間がなくなって、ロビーの斜面にそって3つに並んだソファーに座って妻とコンビ二で買った食事をしたら、けっこうすぐに時間は来た。

 

 初めての映画館。新しいのだろうから、イスも座り心地がよくて、ゆったりしていて、だけど、隣に男性が来たから、少しずれて、1個ずつイスをあけて荷物を載せた。

 

 ラジオなどでかなり細かく説明していたせいか、ここで、こういうな、みたいな気持ちになっていて、その準備のせいか、そのために期待が高まっているせいか、素直に笑えなくなったりしている。

 

 大学を出て、地元の山梨の実家に戻り、そのスポーツ用品店の店番をするでもなく、ただ家でゴロゴロしている。ひたすらダルいという時間、若いのに、なぜか眠くてしかたがなくて、何もしたくない。そんなような時はあったと思う。

 

 前田敦子、というAKBのセンターにずっと立っていて、アイドルばりばりの女性が、秋に実家に帰り、ひたすらダラダラとして、就職活動もしないで、マンガを読んで、体が重い感じになって、冬あたりは目が死んできて、約1年の間を大きな出来事が起こらないで進んで行くのだけど、その目を見ていると、ああ人間ホントに腐るんだ、と自分の去年の、仕事が見つからない時の気持ちも思い出す。そして春になって、アイドルだか、芸能人になりたいらしくて履歴書を送ろうとしているのだけど、見ているほうが「無理」などと思うくらいになっている。

 

 中学生の男子との関わり。そして、その男子は春には背も伸びていたりしていて、さらには父親との関わりが、あとで妻に聞いたら、お父さんとの関係ってああだよね、と言っていて、ただだるいけど、悲惨さというよりは、どこかあたたかさというか、暗くなりきらないのは、やっぱり若い女性だから、だと思う。

 

 おじとのからみとか、父ともしかしたら付き合うかもしれない女性とのからみとか、その言葉がなんだかリアルでそれでいて笑えるときもあって、そしてその父と再婚するかも、という女性を富田靖子が演じていて、自分が若い頃は前田敦子が演じたような役をやっていて、その母親くらいの役をやるようになった、ということは時間がたって、自分も老けているんだな、と思い、自分が若い頃に、映画などと見ていて、昔からの役者を見ていた親などの年齢が上の人は、こんな気持ちだったのかもしれない、と思った。

 

 時間が確実にたっていて、それでも、一方的とはいえ、知っている人も一緒に老けている感覚は、若い頃は違う世界にいると思えたり、どこか脚光をあびているうらやましさがあったりしたが、歳をとっていくと、同じ時間を生きて来たという共感みたいな気持ちが増してきて、でも同時にあんなにいい意味で異質な人に見えたのに同じように歳をとっていく悲しさを勝手に感じたりもした。

 

 夏が終ったら出ていけ。と主人公は、父に言われる。そして、夏が終ったら出て行くんだ、というような話を中学生としていて、その姿や笑顔で、突然終る。

 

 時間がたって、夜になって、あの時間がまだ流れているような、そこにいた人達がどうしているんだろう、みたいな気持ちになり、それだけ、見ているときには、それほど気がつかなかった細部まで、なんだかかけがえのないようなものに思えてくる。

 やっぱりいい映画だったのかもしれない。

 

 

 

 

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