アート観客   since 1996

1996年からアートを観客として見てきました。その記録を書いていきたいと思います。

映画「さとにきたらええやん」。2017.3.25。シネマ・チュプキ・タバタ。

『さとにきたらええやん』(あらすじ)

https://natalie.mu/eiga/film/170066

 

2017年3月25日  

 まったく知らない映画で、まったく知らない映画館だったけど、人に誘われて行くことにする。田端駅で降りて、山手線の東側には、谷間に駅があって、そこから出ると、高架の橋みたいなものがあり、クルマの音が聞こえ続け、なんだかこの前、大塚駅のあたりにもすごく似ていて、世界のはずれに来た感じな気持ちになると思っていて、何度か少し難しい道を曲がったり、降りたりして、見落としそうなほど小さい間口の映画館があった。

 

 映画館には少し早めに着いたので、近くのサンドイッチ屋さんでサンドを買って、映画館の中のソファで食べて、しゃべって、時間が過ぎた。入ったら、25席、という少なさ。すごくこじんまりとした場所。信じられないくらいの狭さだけど、だけど、居心地がいい映画館だと思えて、あとになって、見えない人にも聞こえない人にも対応していて、小さい子供連れでも、泣いた場合にも対応できる部屋があることをあとになって知り、それをきちんと形にすることは、すごいことだと改めて思ったりもする。

 

 映画が始まり、すぐに本編だか何だか分からなかったが、1分くらいで止まってしまい、それは、トラブルだったけど、それからしばらくして、始まる。ラップ。それは西成での生き方、みたいな内容。その街のラッパーが歌っているらしく、そこに自転車に乗った少年の姿が進んでいき、到着するところが、今回の主役みたいな場所「こどもの里」だった。そこは、西成、というような、名前しか知らず、ある意味ではイメージでしか分からない場所でもあって、でも、そこに子供を預かれる場所があるというのを初めて知った。
 
 しかも昼間や夕方や夜まで、親が働いている時間預かってくれたり、親が育てられないような人には、ずっと住み込みのような形にもなったり、虐待しそうな時には夜預かるといった、かなり柔軟なスタイルをとり続けていて、その上で、利用料は無料という、信じられないような場所だった。
 

 こういう場所を、あとでチラシで見ると40年近く続けて来たといった事のすごさに、圧倒される。知的障害といわれてしまった中学生。カメラの前での自然なしゃべりと、中学の中での障害者として、もしかしたらゆるやかな強制の中でのあいさつと、かなり違う。それから、ずっと「こどもの里」で暮らしていた高校を卒業する若い女性は、澄んだ目をしていて、これから幸せがあれば、などと関係のない観客にまで思わせるものがあって、そして、映画の終盤、ドキュメンタリーの中で、この施設の施設長の女性が、くも膜下出血で倒れるということまであり、だけど、こういう仕事を長くやってきたら、そういう負担はかかっていると思わせるものもあって、それでも助かって、見ているほうまでホッとさせるものがあった。

 

 この映画の監督は、足かけ7年をかけて完成させた、ということをあとになって知り、確かに、それだけの時間はかかっているだろうな、と思ったが、でも、面白かったし、見てよかった。

 

「シネマ・チュプキ」

https://chupki.jpn.org/

 

 

 『全国85劇場。ミニシアターのある街へ』

https://amzn.to/42IQzJR