アート観客   since 1996

1996年からアートを観客として見てきました。その記録を書いていきたいと思います。

書籍 『現代美術史  欧米、日本、トランスナショナル』 山本浩貴

『現代美術史  欧米、日本、トランスナショナル』 山本浩貴

https://www.kinokuniya.co.jp/f/dsg-01-9784121025623

 

 

 明らかに、これまでとは違う視点から書かれた美術史だと感じた。

 それは、著者の経歴とも関係があるようだけど、読んでいると、これが現代美術の扱い方としては、グローバル・スタンダート(この名称自体も、すでに変かもしれないが)なのかもしれないと思えてくる。

 書籍の「著者紹介」は、こう書いている。

1986年千葉県生まれ。2010年一橋大学社会学部卒業。2018年ロンドン芸術大学博士課程修了(PhD)。2013年から2018年までロンドン芸術大学TrAIN研究センターに博士研究員として在籍。韓国・光州のアジア・カルチャー・センター(ACC)でのリサーチ・フェローを経て、現在は香港理工大学デザイン学部ポストドクトラル・フェロー 

 

 だから、現代美術史、という言葉からだと、第2次世界大戦後、アメリカの抽象表現主義ではないかと、読者としては勝手に思っていたのだけど、「前史―社会的芸術運動の萌芽」として、アーツ・アンド・クラフツ、民藝、ダダ、大正期の前衛芸術集団マヴォから始まっている。

 

 そして、目次もこうした構成になっている。
 

第1部 欧米編(拡大された芸術の概念―一九六〇年代~八〇年代;芸術における関係性をめぐって―一九九〇年代~現在)
第2部 日本編(ひしめき合う前衛美術―一九六〇年代~八〇年代;「大きな物語の終焉」後の芸術―一九九〇年代~現在)
第3部 トランスナショナルな美術史(越境する芸術―戦後ブリティッシュ・ブラック・アート;脱帝国の技法―東アジア現代美術と植民地主義の遺産)
美術と戦争―豊かな可能性の裏面として

 

 個人的には、特に第3部の視点は、本当に現代美術の現代性に感じて、美術史として、こうしてまとめて語られているのは、新鮮だった。

 

 ごく一部だけど、項目だけ並べても、その内容は伝わると思う。

 

フェミニズムの視座から  嶋田美子と「慰安婦」問題

高嶺格の在日シリーズ 

現代の在日コリアン作家   呉夏枝、琴仙姫、鄭梨愛 

「突然、目の前がひらけて」展   トランスナショナルな連帯の試み

 

 知っている作家も、見に行った展覧会も、こうした「美術史」と名付けられた書籍で、しかも、どんな歴史の中にある作品なのかを確認できたような気もした。

 こうした「現代美術史」は、確かに必要な視点だとは思えた。

 

 

 

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