
2025年4月30日。
ギャラリーの外からも、作品が見える。
その絵は魅力があるように思えた。
線や色彩が、薄く、塗り重ねられていないようで、でも、しっかりとした印象やイメージが伝わってきて、そのキャンバスの埋め方がとても繊細なような気がしてくる。
https://artsticker.app/events/70754
(「Gallery & Restaurant 舞台裏」サイト)
1995年に兵庫県に生まれた土取郁香は、京都造形芸術大学(現:京都芸術大学)大学院美術工芸領域修士課程を2020年に修了し、現在は京都府を拠点にしているアーティストです。土取の作品には、キャンバスに油彩とアクリル、そして時にはスプレーを用いながら、人物どうしが寄り添い、お互いの身体が溶けてしまっているような描写が頻繁に見られます。まるで深く愛し合い、静かに口づけを交わすふたりのようにも、距離は近くても心の距離は隔たった矛盾を抱えた関係にも、ひとりの人間の心が引き裂かれ、内面に相反する感情が同時に生まれる瞬間にも感じられるかもしれません。ぼやけて混ざりあう輪郭線は、鑑賞者がその場に立つ時の心情や状況によってゆるやかにその意味を変え、私たちの心に柔らかな傷跡を残していきます。
(土取郁香個展 「主催者コメント」より)
こうしたコメントは、そのギャラリーのスタッフも、現地で熱心に伝えてくれたし、関係者にそんなふうに熱を持たせてしまうような作品の力を思い、でも、目の前で作品を見ていると、そのことにも納得するし、絵画には、長い歴史があるのに、いつも、魅力的な作品は新しく見えることに、不思議な気持ちがする。
キス、抱擁する 2 人、愛し合う 2 人。 2 人の人物というモチーフを使った作品は絵画史、美術史の中に多数見つけることができる。これを普遍的な、ずっと昔から滅びることなく受け継がれてきた主題であると考える。今も古びることなく。美術史や、映画、そして自分のバックグラウンドとして少女漫画から引用した"密接した 2 人"のイメージのモチーフを中心として制作している。
"密接した 2 人"には愛情や安堵を示すものと、片や死、恐怖、憎しみの感情、一方的に振るわれる暴力的なもの、を引用している。それは、密接する 2 人のイメージが愛情からなるものと暴力からなるもの、真逆と思っていたことが絵画上ではとても似ている、見分けがつかない、そのことに気付いた経験に由来している。(抱き合えるのは別々の体だからだ、では暴力は?)その矛盾について、絵画にはなにが示されていて、隠されていて、なにをあるものとして、ないものとしているのか。絵画の中で逡巡している。
(土取郁香個展 「展覧会ステートメント」より)
どうやら、作者は絵画を描いていくことに対しては迷いがないようだ。
それが作品の存在の強さにつながっているのかもしれない。