アート観客   since 1996

1996年からアートを観客として見てきました。その記録を書いていきたいと思います。

会田誠展 「天才でごめんなさい」。2012.11.17~2013.3.31。森美術館。

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会田誠展 天才でごめんなさい」2012~2013。

2013年3月21日。

 半年くらいの会期だから、いつでも行けるんではないか、と思っていて、油断していたら、あと一週間くらいで終わりになりそうなので、もう今日は行くと決めて妻と出かけた。

 

 森美術館で、まさか会田誠が、このビルの一番高いところで展覧会をやるなんて、ある意味信じられなかったし、その作品はずっと好きだったけど、すごく自分を出さない感じが、守っているようで、ある意味では格好をつけているようにさえ思えて、微妙な気持ちの時もあったが、会田誠は、スタンスを変えないで、淡々と、とにかく作り続けて来た。作品を変わらずに作り続けることで、ついに完全にモノになったというか、独自の、他には誰もいないような、最初は芸術家を模倣しているように見えた感じまであったのが、ホントに独自の存在になったように思えている。

 

 立派な美術館であったのだけど、完全に、会田誠の展覧会になっていた。

 でかいちょうちんがある。

 酒を飲め。的な一里塚的な立体がある。

 見たことがある作品が多かった、というよりも、15年間くらい、会田誠の作品は、ミヅマアートギャラリーでやる個展などは、かなりマメに行っていて、だから、途中で、「みんなといっしょ」という、とにかく考えずに書く、という作品を見て、どこかコンセプトに偏っている、というような気持ちもしたけれど、会田誠は、たぶん、ずっとそうだった。昔の作品からずらっと並ぶと、それぞれが作品の多様性、という言葉が肯定的に響くようなものになっているのは、やっぱりその作品の数と質がすごいのだと思う。

 

 最初に見たのは「ぴあ」という雑誌に、小さく載っていたダンボールで作った天守閣で、それを新宿のホームレスが使うように新宿に置いた、というもので、それがとてもすごいと思って、そのことがきっかけで現代アートというものに興味を持つようになったのだから、恩人の1人でもある。

 

 その時は、ダンボールで作った天守閣は見られなかったが、「tokyo pop」(1996年。平塚市美術館)で見たのは、小学生が、道徳的なものをテーマに描かされる、という形をとって、小学生風に描く、という作品だった。それからあとも、エロかったり、グロかったり、というような作品も、ここには並んでいて、でも、その絵の技術はうまく、というよりも、人に訴えかける、品のいい「絵質」というものが、かなり含まれているような気がしている。そして、少女が多く出てくるが、その姿が、それこそ私の、個人的な趣味なのかもしれないが、素直にかわいいと思えるのも、実は強みなのではないか、などとも思う。今の時代の美人画として、将来に残っていくのではないだろうか。

 

 形としては、シリアスとは別の流れにも見える「おにぎり仮面」とか、「考えない人」とか、どこか抜けているものもあって、それはそれで、考えていることを形にする、という事では、会田誠にとっては同じことなのかもしれない、と思うと、改めて、凄さを確認できたようにも思う。

 

その一方で、「18禁の部屋」を設けて、見たくない人には見せない、という設定をきちんとした上でも、その部屋で、完全におかしなエロまんがでもあり、前衛的でもある「ミュータント花子」を、おしゃれな女性が観賞している姿を見ていることにも、不思議な気持ちにもなった。

 

 そして、大きい絵は、やっぱり密度が高い。「灰色の山」も、「ジューサーミキサー」も、新作も、絵としての力がやっぱりあると思った。

 

 思いついたことを、おそらくすべて形にしようとしてきて、形にし続けて来た20数年は、やっぱり本当に、すごいと思う。

 この展覧会で、注目を集めたがゆえに、児童ポルノや女性虐待で、訴えるという話になったり、ツイッターの無断使用でクレームが来たりしたが、そういう人たちは、これまでにも会田誠の作品を見てきたのだろうか、といった気持ちにもなったし、訴える側にも、いろいろな思いはあったはずだけど、そんなことがあっても、会期終盤になっても、一部の展示が閉鎖されたりすることもなく、個人的な気持ちに過ぎないが、作品を見ることができて、よかったと思った。このところ、会田誠をテレビで見る機会が尋常じゃなく多かったが、その時間も、もう終るのだろう。

 やっと見に行けて、よかった。

 

         

 

 (2013年の時の記録です。多少の修正・加筆をしています)。

 

 

会田誠展 「天才でごめんなさい」

https://www.mori.art.museum/contents/aidamakoto_main/