アート観客   since 1996

1996年からアートを観客として見てきました。その記録を書いていきたいと思います。

「おとなもこどもも考える ここは誰の場所?」。2015.7.18~10.12。東京都現代美術館。

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「おとなもこどもも考える ここは誰の場所?」。2015.7.18~10.12。
東京都現代美術館

2015年10月8日。

 

 この展覧会は、夏休みに合わせたもので、同時期に機関車トーマスの展示もやっていたから、その狙いはとても明らかなものだけど、始まったのが7月の下旬だった。それから1週間くらいで、なんだかトラブルが起こっていたのを出品作家の一人である会田誠ツイッターで知った。作品の一部が、この美術館の責任者といっていい学芸員から、撤去を求められた、という話だった。それが早くに出たせいか、そして、その発言はとても穏当で真っ当であったので、作品が撤去されることもなく、ただ、会田誠の発言に対する何かしらの声明が美術館側から出されることもなく、時間が過ぎた。

 

 その作品は見たいと思っていて、妻はあまり気が乗らないみたいだったけど、もうすぐ終るので、とにかく行きたいんだけど、ということを言って、一緒に行けることになる。

 

 いつもやっているアニュアルとか、大竹伸朗の展覧会とか、とても有り難い企画も多く、そういえば、村上隆の大規模な個展をやったのもここだったし、ウォーホルがすごいのを知ったのも、ここでの展覧会だった。それだから、余計に、今回、美術館側が、まだダンマリをしているのは、残念な気持ちが強いが、ただ、それを批判とかするよりも、会田誠が、的確に作り手としてやるべきことをやって、作品を展示するという形を守ったので、そのおかげで、こうやって見に行ける。

 

 最初の展示は、ヨーガンレールだった。妻に聞いたら、原宿の?と言われたので、この人が著名なデザイナーだったのを初めて知ったが、この人が去年亡くなったのだけど、それまでに海岸近くに住んでいて、そこで拾ったゴミを使って、ランプを作って、それはとてもきれいでオリジナルなもので、すごかった。妻は本当に見とれるというように、その部屋に長くいた。

 

 岡崎乾二郎の作品は、大人は入れない。小学生と中学生のみ。高校生で入りたい人は、そこにある詩を朗読したら、という条件がついていた。大人は芸術を分らないというよね、といった文字もあったけれど、確かにそうかも、と思いながらも、アートに興味を持った18年を振り返って、これだけアートに触れたり、見たり、考えたり、の日々はすごく当たり前にもなったのだけど、不思議な気持ちはする。ただ、そういうことがなければ、ここまでの介護の16年は乗り切れなかった。

 

 会田家の展示。真ん中に大きく檄文がぶら下がっている。内容はわりと穏当というか、大勢の人が思っていそうなことで、発達障害と診断されるような子どもたちの保護者としても当たり前のことでもあって、これをタイプをして壁にはる、といった妙なスマートさに変えてしまったら(そんな提案が美術館からあったそうだが)意味が違ってしまうし、そんな提案をする事自体が、いい言葉ではないが、とてもセンスがないと思う。

 

 会田家の岡田裕子の作品で、陣痛弁当とか、そして、その岡田がこの展覧会などについて美大で語ったことがとても分りやすくて、そして、その息子は特殊学級で苦労して、その大変だった時期の記憶がない、といった話を聞くと、そんな小さい頃から苦労をさせるようなシステムはやっぱりおかしいのだろうな、と改めて思ったし、寅次郎の作品も、自分がしゃべっているものだけど、ああ、こういう熱中して一つのことをずっとしゃべっている感じって、友達の子どもと遊んだ時とか、おいやめいの子どもの時を思い出して、ちょっとなつかしかった。

 

 学校とか、教育とか、やっぱりある種の強制ではると思うし、平凡への強制、という部分はあるとは思うものの、やっぱり今のシステムは違うのではないか、そして、社会全体が「学校」っぽい強制力だけが強くなってしまったのではないか、などと思ったりもして、そういう事をいろいろと考えたりもしたが、親として大変だったのだろうな、とも思う。

 

 アルフレド&イザベル・アキリザン。ダンボールで手のひらに乗るくらいの家を、それも様々な実在するのか想像上だけなのか分らないけど、その家が大量にあって、樹木のように高く積み上がっていて、不思議な光景だった。バリエーションとダンボールという質感の統一感が面白かった。

 来てよかった。

 

 常設展は、さーっとみた。

 大きな樹木の作品や、その展示室をとても広く使っているのが印象的だったし、横尾忠則のY字路はよかった。ひかれる。

 妻は迷って、ヨーガンレールの作品集を買った。

 

 

 

 

(2015年の時の記録です。多少の加筆・修正をしています)。

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