アート観客   since 1996

1996年からアートを観客として見てきました。その記録を書いていきたいと思います。

「フランシス・ベーコン展」。2013.3.8~5.26。東京国立近代美術館。

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フランシス・ベーコン展」。2013.3.8~5.26。東京国立近代美術館

 

 2013年5月25日。   

 フランシス・ベーコンは、いつの頃か好きになっていて、その絵がグチャグチャな感じを伝えていながら、シャープで、しかも、不安で、叫びがすごくリアルで、それでいて、画面がとてもきれいに感じていた。

 横浜美術館や、国立近代美術館に所蔵品があり、常設展などで見ると、得した気持ちになれていた。30年くらい前に、個展が開催されたということを、どこかで読んで、その時に見たかったとも思ったが、その頃は、勝手なことだけど、自分がアートに興味がなかった。

 

 最初の絵は、叫んでいた。

 絵が強い。それから、叫んでいた絵もかなりあった。どうして、こんなに強い気持ちが出して来れるのだろう、というのと、この絵のイメージが、今から60年前にあったなんて、というような驚きもあった。

 だけど、考えたら、戦争を経験していて、それが、展覧会内で見た映像で、想像以上に繊細な人だと思ったから、そんな人が、それだけ過酷な時間を生きて来て、それを表現したのだろうとも思えて来て、本人の言葉で、暴力的なのは世界だ、みたいな事を言っていて、それはカッコをつけているわけでもなく、ホントなんだろうな、と思った。

 

 いつの頃か、道端の犬のうんこを見て、これが人生なんだ、と思ったというのも、ホントなのだろうと思えるような作品が並んでいた。大きい絵が多かった。これだけたくさんの作品を見て、どれも、密度が濃くてきれいで、伝わってくるものがリアルだった。こわいと言ってもいいのだろうけど、すごくて、いつのまにか、この日も人がいっぱいいて、それも印象派が好きそうな中年女性の方々や、おしゃれ系の人達も多くて、フランシス・ベーコンって、そういうメジャーな作家になっていたことを知らないままだった。

 

 そんな風に見る側の都合が変わったとしても、作品にガラスを必ずつけて、少し距離をとらせているところとか、3枚の絵が並んでいるのも、この人しか見られないような深みときれいさと、どうして、こういう世界を、まるでどこかにあるように描けるのだろう、というすごさがあった。よかった。その印象は、たぶん時間がたっても、変わらないのだろうと思った。

 

 Tシャツは迷って、買うのをやめた。地下鉄の駅のビルの地下が見事に空いていて、そこのサブウエイで食事をした。

 

 

 

 

(2013年の時の記録です。多少の加筆・修正をしています)。

 

 

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