アート観客   since 1996

1996年からアートを観客として見てきました。その記録を書いていきたいと思います。

「メグロアドレス……都会に生きる作家……」。2012.2.7~4.1。目黒区美術館。

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メグロアドレス……都会に生きる作家……」。2012.2.7~4.1。

目黒区美術館

 

2012年3月30日。

 歯医者が終ると、今日は、あとはアートに出かけるだけで、しかも、義母はショートステイに預かってもらっているから、帰りの時間をそんなに気にすることもない。今日は、ここのところでは一番工事の騒音がひどい。すぐそばにマンションが建つことになっていて、重機の扱い方が、雑になっているのが分かる。

 

 それでも電車に乗って、目黒駅に着いたあたりでは、気持ちが軽くなっていて、坂道を降りて、目黒川に自転車が捨てられているのを見た。目黒区美術館は、いつも、人が少なく、寂しい感じが強いのも変わりがない。

 

 1階のスペースは空いていた。2階にあがったところには、犬の彫刻が2匹いた。良く出来ていた。その途中の階段で、外ともガラス越しにつながるような場所は、白く塗られていて、よく見ると、外の葉っぱなども白く塗られていて、外部と内部と、つなぐのを意識して、みたいな事らしい。同じ作家の作品らしいガラスと、木材と、合板らしきものをつないで作った机があって、係の人に聞いたら、「さっきの階段のところと同じ人です」という答えだった。長坂常という建築家の人の作品だった。

 

 青山悟が、広いスペースで、音楽を平石博一と組んで作った作品は、楽譜を、その下の金の下地と思えたところから、音符も含めて、すごく細かいのに、全部、ミシンで縫って、刺繍として仕上げている、という過程を映像で見せていて、音楽も、ここでは合っていて、特に、妻は、その楽譜がすごいと感心していた。

 

 それから、保井智貴は、ほぼ等身大の、若い女性、それも今実際に存在していそうな像を表面は、漆を使った彫刻に仕上げていて、ホントにそこに人がいるような気持ちになった。それが2体。最初の犬も、保井の作品だった。

 

 須藤由美子(すとう、と呼ぶらしい)の取り壊しが決まった家の庭を鉛筆を中心にして描いた絵が、記憶というか、印象のリアルさを優先させたような絵で、これは、その家に住んでいた人がいたとしたら、写真よりも嬉しいかも、と思わせた。その作品に、一部屋が使われていた。

 

 南川史門は、チラシの絵が魅力的だったけど、ここで見ると、落合多武のことをどうしても思い出してしまった。

 

 視覚を失った人のガイドヘルパーの経験から、普段は写真作品として展示されないような写真ばかりを並べたような、世の中の、人によって、リアルの違う形のように見えた写真は、厳密な感じと、その底に、人の意識みたいなものを大事に扱う姿勢が見えたような気がして、今井智己の作品は、よかった。

 

 ゆっくりと見て、1時間半くらいは見て、そのために午後4時で終ってしまうラウンジのコーヒーは飲めなったが、気持ちが落ち着くような、少しゆっくりとした時間を取り戻せるような作品ばかりで、気持ちがよかった。カタログも買った。

 

 帰りに、目黒駅のそばのモスバーガーでコーヒーを飲み、駅ビルで買い物をした。そこから武蔵小山に出て、雑誌で見たラーメン屋を探しても見つからず、違う雑誌で見たカフェの方に行った。ゆったりとした時間だったし、時間を過ごすこと自体を、妻と食事をして、話をして、もう疲れた、と言い出すような時間まで、楽しかった。

 いい一日だった。

 

 

(2012年の時の記録です。多少の加筆・修正をしています)。

 

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