2016年12月23日。
個展の正式名称は「僕が17歳の時、ジャコメッティの話を美術の先生に聞いて、彫刻に憧れて、僕は今、彫刻を作ってます。」展。というから、もしかしたら、美術の個展としては、キラキラネームなどと言われてしまうのかもしれないが、でも、その意味は、その通りで、その初心みたいなものを忘れません、という宣言でもあり、それは刺青みたいなものでもあって、これから先、彫刻を作り続けます、ということでもあるのだろうから、角度を変えれば、呪いといっていいものかもしれず、そんな言葉がリーフレットにも書いてあり、それはいつもながらカジュアルすぎるような気もするが逃げも隠れもしない、という意味では、すごい戦略もあるのは間違いなくて、20年以上、現代美術という場所で本当に戦ってきた村上隆が、ただのゆるい文章を載せるわけもないから、と同時に、小さいリーフレットなのに読み物としても完成度が高く、その背景や、予算があったら、その作品を買いたくなるような内容でもあって、この日は、最初に別の展覧会を見に行って、それから、広尾で降りた。
広尾の坂道を上がる。何も見えなかった時、GEISAI大学という企画で、けっこう何度も通って、そこでいろいろなことを学んで、その一方で楽しかったけど、こういうことを何に生かしたらいいかが分からなくて、どこか悲しい気持ちにもなり、さらには自分が40代を終わろうとしていて、社会的な蓄積を作る40代に、もっとも個人的なことの一つである家族の介護に丸10年をかけてしまって、もう終わっていると思っていた頃だったけど、それでもその企画は楽しかった。
ギャラリーはきれいだった。
作品は、奈良美智にそっくりな立体もあったが、それも、手伝っていたのだから、ある意味当然だろうし、そのことに関する説明もあった。他の立体も、ほのぼの、だけではおさまらない、どこか神々しい感じも漂う感じもあって、見ていて、ゆっくりと時間が流れる気持ちになったのは、他のお客がいないせいもあったかもしれない。気持ちが、少し落ち着いた。
「大谷工作室」(カイカイキキギャラリー)
https://gallery-kaikaikiki.com/category/exhibitions/ex_solo/otaniworkshop-exhibition/