アート観客   since 1996

1996年からアートを観客として見てきました。その記録を書いていきたいと思います。

MOTアニュアル2002。「フィクション?絵画がひらく世界」。2002.1.19~3.24。東京都現代美術館。

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MOTアニュアル2002。「フィクション?絵画がひらく世界」。2002.1.19~3.24。東京都現代美術館

2002年3月23日。

 若い友人2人と妻と一緒に4人で行くことになった。うれしい。

 東京駅からバスで、美術館へ。

美術館に着いて、わりとすぐに目指す「フィクション?」に入る。

 

 今村哲の作品。宇宙だとか月だとか⋯ハルだとかが出てきていて、それが蜜ロウが使われていて、ジャスパージョーンズを思い出すが、それを見て、李白だ、と言っている若い友人に教養を感じる。いろいろ説明がある作品だったが、最後の粘土は、宇宙飛行士が、宇宙へ飛ばされて、死にそうな時に、何かを火星の粘土で作ろうとして、思い出せない、みたいな話だと後で知った。

 

 村瀬恭子。いろいろな印刷物で見ていて、見たかったアーティストの一人。女の子のドロドロというか妙な湿り気みたいなものがある。印刷物で見ていた時の期待を、個人的には上回っていなかったのは、どうしてだろうと思い、こちらの見る力の問題もあるのかもしれない。

 

 タナベマサエ。カーテンやクッションを使って、その表面に絵を描き、それを広い展示室を使って、並べている。若い友人の一人が、いたく気に入り、今度はオブジェを作りたいと言っていたくらいだった。もっと、この人の作品は、たくさん見ないと、良さが分かりにくいのかもしれない。

 

 紺泉。銀座のギャラリーへ見に行き、その時から気になっている。

「紺泉が描いているのは、家にあった本や、『流行通信』や『BRUTUS』のような雑誌で見つけた、装飾的な物たち。細かいタッチの集積とアクリル絵具の煌めきは、それ自体、工芸品のようです」(パンフレットより)

 この人の作品は、何だかいいと思える。これから、またどういうものを描くのかという期待が持てる。

 

 柴田健治。何も描いていないようで、何かが見えるような⋯。でもリヒターみたいなものではなく、もっと明るくつるつるな感じ。これに、若い友人二人がが反応していたのは、何だか興味深い。

 

 蓜島伸彦。シルエットだけの切り絵のような作品。バックの色と、その馬とかペンギンとか、真ん中にくる題材との色が近い方がいい。と妻が言い、確かにその通りだと思っていると、若い友人は、はっきりと色が違う方がいい。と断言する。そう言われると、そんな気持ちにもなる。人によって違う。それはやっぱり、おもしろい。と改めて、思う。

 

 佐藤純也。小さなポジフィルムのような絵が限りなく並んでいる。一つ、一つに手描きで小さな飛行機のようなものが描かれていて、それを分った時に「おー」と思う。

 

 落合多武。この人の細かくて、妄想を形にしたような作品は最初、雑誌で見た時から気になっていて、その後スパイラルで見て、いいなーと思い、今回もこの人の作品があるから、積極的に行こうと思ってもいた。壁にも落書きのようにちまちました絵が並んでいたり、大きめの女の子の絵があったり、それもアニメというかマンガというか、そんなタッチのもの。風船で立っている一枚の絵とか⋯自分の妄想の作業台とか⋯結構、よかった。

 ただ、どこかで少し期待ハズレな気持ちにもなってしまう。大きいところでやって、展示室がわりと広くて、そのことによって、妙に張り切るのは一番みっともない。と思っているのかどうかは分らないが、何だか力をセーブしているような感じがした。こういうのが狙いなのかもしれないが、何だか物足りなかった。妙なファンタジーだけど、冷静なところがあって好きなのかもしれない。ただ、もっと狭いギャラリーとかいった場所の方がフィットしているのか、それとも、もっと違った形の作品があったりした方がいいのか、それは見ている方としても良く分らなかった。

 それでも、展示全体は、よかった。見に来てよかった。

 

 カタログも1000円でありがたかった。いつも妻と2人だけで、たまに誰かを誘っても、何となく反応が悪くて、こちらも気を使ったりするのだけれども、今日の若い友人たちは、わたしたちよりアートに詳しいし、好きに見て、反応もよく、楽しんでいたので、より、充実した時間になった。

 

 

(2002年の時の記録です。多少の加筆・修正をしています)。

 

www.mot-art-museum.jp