アート観客   since 1996

1996年からアートを観客として見てきました。その記録を書いていきたいと思います。

「アートは心のためにある:UBS アートコレクションより」。2008.2.2~4.6。森美術館。

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「アートは心のためにある:UBS アートコレクションより」。2008.2.2~4.6。森美術館

 

2008年2月24日。

  地下鉄から地下の歩道を歩いて、エスカレーターに乗るところのスターバックスは混んでいて、そばのサンドイッチも売っているところに行った。入る前にお茶をして、見て、再びお茶を出来るようなコースは自分としてはぜいたくで、有り難いと思う時間だった。そのお店の店員たちは、微妙にテンションが低く、並んでいる食べ物まであんまりおいしそうに見えなかった。居酒屋などが、喜んで!と無駄とも思える元気があるのは、意味あるんだな、と思えた。その女性に、オーガニックコーヒーを注文したら、目の前のポットを押してコーヒーを注いでくれた。申しわけないのだけど、ありがたみは薄くなった。

 

 そして、森ビルの53階へ。やたらと警備員の数が多く、日曜日の夕方なのに、お客の数も多い、と思っていて、その展覧会を見ていると、少したつと、シュテファン・バルケンホールの彫刻もあるし、鮮やかなゲイリー・ヒュームもあるし、ゲルハルト・リヒターの「ヘレン」は何だか不気味でよかったし、グレーの建物の絵もよかったし、デミアン・ハーストとは思えないような作品もあって、ホントに幕の内弁当のようだけど、様々ないわゆるビッグネームが揃えてあるような感じだった。

 バスキアの絵の前で、カップルが「あ、バスキアだ」と微妙に声を揃えた。アレックス・カッツの絵の男性は、石野卓球みたいだし、吉本の若手のライブのチラシみたいにも見えたし、妙な感じはキャラ立ちしていると思った。アンドレアス・グルスキーの「99セントショップ」とかサッカーの写真とか、不思議なシステマチックな感じが、よく伝わってきたのだった。フランチェスコ・クレメンテの絵が思った以上によくて、人物の周りの何だか降っている固まりのようなものが、よかった。

 ただ、全体としては、そのアーティストのすごくエッジがきいたような作品はないように思った。デミアン・ハーストの絵は、ドットがたくさん並んでいて、それには同じ色がない、という作品だった。全体として、やや穏やかでありながらカラーはハッキリしていた作品が並んでいる気がした。やっぱり、金融機関のコレクションらしい、と、そんなに分かっていないのに、思う部分があった。でも、銀行の元祖って、イギリスだったような記憶もあるし、とも思った。

 

 そういう中で、それまで全く知らないけど、すごくいいな、と思った作品があった。

 オスカル・ムニョス。コロンビア出身。

 角砂糖にコーヒーをしみ込ませて、四角く組み立てて、それが、少し離れて見ると何人もの顔になっている。その顔は、10人くらい並んでいたと思ったけど、どれもコロンビアの国内で、何が原因かはハッキリとカタログには書かれていないけれど、政治的に不安定な国内で殺された人達、という書き方をしていた。コーヒーも砂糖もコロンビアの特産品ということでもあった。

 それから、いくつもの小さなモニターが並んでいる作品。そこに大理石のような石の板がただ映っていて、そこに筆が出てくる。水をつけて、それで顔を描き始める。早送りの映像。でも、顔にみるみるなっていく。うまいのが分かる。そして、描き終えたそばから、蒸発していく。そういう作品。いくつもモニターがあるから、その映像が次々と出てきて、あきないような工夫もしている。その顔は、やっぱり、殺された人達かもしれない。

 他の作品も見たい、と思った。

 マウリッツオ・カテラン。を思い出した。しぶとい感じで、それでいて余裕もあって、だけど、ぶれていない信念みたいなものもある。強さも伝わる。

 帰りは、ビルの地下へ行った。いろんな店が閉まっていて、新しくなるらしかった。5年でかなりの数が入れ替わる。厳しい感じがする。そういえば、あの喫茶店みたいなところ、何回か行ったけど(古奈屋のそば)人が少なかったな、と思い、そこはなくなるのが分かった。ラーメンを食べて、タリーズコーヒーに行った。工事の音がずっと聞こえていた。六本木の道が見える。まだ8時なのに、ものすごく深夜な感じがした。9時になって、閉店です。と言われて、帰る。でも、ゆっくり出来た。次の展覧会も来ようと思った。デミアン・ハーストのサメの作品か羊の作品も見られるらしいし。

 

(2008年の時の記録です。多少の加筆・修正をしています)。

www.mori.art.museum