アート観客   since 1996

1996年からアートを観客として見てきました。その記録を書いていきたいと思います。

「小林孝亘展 ― 終らない夏」。2004.4.24~6.20。目黒区美術館。

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小林孝亘展 ― 終らない夏」。2004.4.24~6.20。目黒区美術館

2004年5月29日。

 

 久しぶりに目黒区美術館

 この小林という人の絵は、なんだか気になっていた。

 そして、たとえば「美術手帖」などでも、これからの何人かの重要なアーティストに入っていた。

 その絵の多くは、写真などでしか見たことがなかった。だけど、東京都現代美術館の「デイズ」の時のオートバイの後ろ姿の絵が、コンパクトで、でも何だかよかった。

 

 そして、この展覧会に合わせて、対談もやると知った。

 丸山直文氏との対談に合わせて出掛けた。

 すごく人がいた。展覧会場をそのまま使っていた。

 100人を超えていたと思うが、椅子を用意してくれていて、ありがたかった。

 話が始まる。

 2人とも声が小さく、よく聞こえない。

 特に丸山氏の声は、本当に耳を澄まさないと聞こえないから、会場は、より静かになっていた。

 2時間の話の中で、様々な知識などをベースに、いろいろ聞いていく丸山氏の質問に、小林氏は、ずっと、その時に思ったままを、そのまま描こうとしてきた。と答え続けているように見えた。そして、それは本当に見えた。

 美大生のような女性の難解な質問にも、同様に答えていた。

 小林氏は、1960年生まれ。そして、愛知県立芸術大学卒業、もしかしたら、奈良美智と同じような時期に同じ大学に行っていたかもしれなかった。

 

 とにかく思いのままに描こうとしてきた態度は、共通するのかもしれない、と思った。そして、小林が、僕達より上の世代は、西洋への反発があったり、それをどうするか?がテーマだったりした部分もあったと思うけど、僕達くらいは、西洋の影響も含めてどうしていくか?になっていると思う、みたいな言い方も、何だかよく分るような気がしたのだった。

 

 展覧会は、凄くよかった。

 初期の潜水艦の絵は、初めて見たけど、リアルで凄くよかった。

 風景の中に潜水艦があって、それは妙に黒々として、存在が前に出ているのに、引きこもっているようにも見えた。ざらざらしている感触だった。

 他のたとえば犬の絵も、それはよく見たら確かにマンガみたいだったが、今回、そういう質問(マンガみたい)が出て、初めて、そう思ったのだが、だけど、それは、写真などで見ていた時と違い、思ったより大きくて、いい意味で、印象も違っていた。

 

 最近の、日光浴の絵のシリーズと寝姿のシリーズの絵があって、それは展示室を区切っていて、日光浴のシリーズの方が照明をかなり強くしてあるというのを対談の中の学芸員の話で知り、丁寧な見せ方だとも思った。

 

 小林氏本人が、好きな音楽を聞かれて、ブライアン・イーノ⋯静かだけど、ピンははったようなところがあるから。⋯と答えていたが、そういうようなことを感じる展覧会だった。静かで穏やかだけど、そこの場所にいると、気持ちの深いところまで、確かに動いていると思えるような絵だった。

 また好きなアーティストが増えた。

 

 

(2004年の時の記録です。多少の加筆・修正をしています)。

 

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