アート観客   since 1996

1996年からアートを観客として見てきました。その記録を書いていきたいと思います。

「木村太陽展」。2005.4.15~5.21。ヨコハマポートサイドギャラリー。

2005年5月13日。

 早く起きて、それも予定よりも20分遅くなったから、凄くあわてて15分くらいでしたくをして出掛けて、昼前に病院に着く。それから2時間ほど病院にいて「じゃあね」とレクリエーションのスペースで母を見送って、他の患者さんと少しだけあいさつをして話をすると、必ず「親孝行ね」と言われる。ホントにぎこちない笑顔しか出来ないが、夕方から用事があると言って、バスに乗る。昼過ぎに帰れるだけで、嬉しい。それから、電車に乗って、横浜駅で降りて、ホームで妻を待つ。視線があちこちに引き付けられて、いろんな人を見ていると、来ないなあ、と思っている時ではない瞬間に、妻がホームの少し離れたところにいるのに気がつく。

 

 待ち合わせは嬉しい。

 そこから、階段を降りて、改札口を出て、右に曲がり、東口方面へ向かう。地下街を歩く時はそうでもないが、外へ出て、高速道路が上を通っている道を歩いていると、主にクルマの走行音の、絶え間ない騒音が聞こえ続けてきて、すさんだ雰囲気が続いて、早く歩いて、目的地に着きたくなる。そこは、みなとみらい地区の、たぶん初期の開発地で、アルファベットの並んだビル。光は、たくさん入って、近代的と言われる作りなのに、あまり新しい感じがしないし、やっぱりざらざらした感じは、どうしても建物でも抜けず、なんとなく落ち着かないのに変わりはない。

 

 そのビルの中に、ギャラリーがあり、そこで木村太陽展をやっている。

 東京都現代美術館で、5年前にグループ展に出品していた木村の作品を初めて、実際に見た。すごくいい、と思った。体の感覚、それも誰にでも共有できるけど、そんなには経験していない⋯というより、経験したくないような、でも少し笑ってしまうような馬鹿馬鹿しいことを、真面目な顔をして、次々とチャレンジするビデオを見て、すごいと思った。

 

 それから、木村はベルリンへ行き、海外でのグループ展が多かったらしく、あまり見ることもなく、このまま日本ではあまり発表することもなくなるのかと思っていたら、ベルリンから帰ってきて、展覧会を横浜でやっているのを早朝の5分間のアート番組で知って、それで、このギャラリーに来た。

 

 ポスターはかっこよかったが、あまってもないし、販売もしていないんです、とギャラリーの受け付けの女性に言われた。

 

 へんな自転車。

 頭が割れている、変にコミカルな小さい妙な人形。

 壁につけてある縄跳びが、時々、急に回り始める。

 作り物の鼻が壁一面にあり、時々、ぶるぶると一斉に細かく動く。

 床においてある雑誌は、瞳の部分だけくり抜いてある。

 

 そして、洗濯物らしきものが雑然と置いてあって、そこに首を突っ込むと1人だけ見られるようなモニターがある。その映像は次々と変わっていく。

 魚をくわえて、その口にタバコをくわえさせ、煙を出す。

 たぶんドイツ製の、どこかカッコよく見えてしまう洗濯機の中に、マヨネーズなどたくさんの調味料や食品をいれ、スイッチを入れる。

 

 その印象は、5年前と変わってなかった。

 空間がたっぷりある、そのビルの喫茶店で、妻とコーヒーを飲んでいたら、木村太陽本人も見かけた。妙に透き通った表情は、5年前に見た時と変わらなかった。

まだ、見ていきたい、と勝手に期待してしまった。

 

(2005年の時の記録です。多少の加筆・修正をしています)。

 

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