アート観客   since 1996

1996年からアートを観客として見てきました。その記録を書いていきたいと思います。

「もうひとつの現代展」。2003.10.11~2004.1.25。神奈川県立近代美術館 葉山。

f:id:artaudience:20201202212520j:plain

「もうひとつの現代展」。2003.10.11~2004.1.25。

神奈川県立近代美術館 葉山。

2003年10月22日。

 

 入院中の母が、テレビで見たのか、それとも、何かの話のついでに出たのか、それは忘れたが、何しろ、新しく葉山に美術館が出来るという話題になり、そのうち行こうということになっていたが、そのことを、母は忘れなかった。

 

 外出は、早く家を出なければいけないし、母と一緒だと、確かに物凄く気を使う。何かあったら、病状が悪化することもあるし、動きは凄く遅いし、反応も外へ出るとちょっと変わってしまったりする。

 

 だけど、行こうと思った。新しく出来た美術館だし、そして、それが母の入院する病院と同じ神奈川県だし、ということで、出かけることにした。

 

 それでも、出かけるとなると、母は嬉しそうだった。たまたま、この日は雨になってしまい、それでも、大丈夫、楽しみにしてたから、と病院でも繰り返していた。

 

 病院の最寄りの駅に出て、そして、電車が来て、その頃にはもう午後2時は軽く回っていた。だけど、雷のせいで、しばらく電車が止まった。あせった。後、これくらいで、どうで、着いてから、このくらいで、という計算をしていたが、だけど、それらは全く意味がなくなった。

 

 大船駅へ着いて、階段しかない駅だから、物凄くゆっくり歩いた母は時間がかかり、そこから逗子に出る。トイレに寄った。もう3時は過ぎていたと思う。だけど、行かなきゃ。雨は激しくなっている。タクシーに乗った。意外と遠い。空は暗く、雨の激しさのため、視界が悪く、雷が聞こえる。それなのに、美術館まで約20分。不安な感じだけが高まった。そして、美術館に着くと、タクシーで降りてから、美術館の中へ入るまで、ちょっと距離があって、階段を登って、というコースしかないことに秘かにいらだっていた。

 

 美術館はできたばかりだし、とても綺麗だった。

 作品は戦後の日本のものだった。近代美術館の所蔵品らしい。

 棟方志功の大きい版画とか、けっこうよかったり、展示室にも窓があって、床ぎりぎりのところからだけど、海が見えたり、美術館としてはよかった。

 

 母も明るい作品が多くてよかった。と言っていたので、よかったと思った。それに、この天候で、がらがらだろうと、思ったのだけども、思った以上に人がたくさん来ていて、それは、ホントに心の中で驚いていた。

 

 その中のレストランは、海のすぐそばにあって、この美術館自体が海際にあるのだが、その中でも最も海そばにある所で、ホントに窓の外は海が広がっている。レストランは、外部の運営らしい。そういえば、その依託に関して、この収入は見込めないから、という新聞記事があった。その中のウエイター、本人はギャルソンと呼んでほしそうな人だった。ケーキとコーヒーを食べて飲んだ。雨だったが、気持ちがいい時間が過ごせた。

 

 帰りは、雨が上がっていた。

 帰り道に、いつか吐くかも、というしぐさを母が時々見せたが、それはこちらの考え過ぎで、そして、病院の最寄りの駅に戻ってから、寿司をいつも外出の時に行く店で食べて、無事に帰れた。よかった。

 

 

 

(2003年の時の記録です。多少の加筆・修正をしています)。

 

www.moma.pref.kanagawa.jp