アート観客   since 1996

1996年からアートを観客として見てきました。その記録を書いていきたいと思います。

「伊藤存 きんじょのはて展」。2003.9.5~11.24。ワタリウム美術館。

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伊藤存 きんじょのはて展」。2003.9.5~11.24。ワタリウム美術館

 

2003年11月22日。

 久々に妻と2人で揃って外出。それも電車に乗るような遠出。天気もいい。

 ワタリウムに着く。久々。伊藤存は、2001年の横浜のトリエンナーレで見てから、その時から面白いと思っていたアーティスト。刺繍だけど、不思議な感じがする。その世界は、妙な具体的な像が画面にあって、何か一瞬分らないことも多いが、でも、何だか凄く気持ちにフィットするのだった。

 

 2階に刺繍の作品が並ぶ。何だかおなじみな気持ちにもなる。

 そして、ワークショップ参加者のブタの塗り絵が壁にはってある。

 3階には、自分のイメージが立ち上がっていく途中のアイデアノートみたいなものが置いてある。椅子に座って見ても、床のクッションに座って眺めてもいいように出来ている。少し座った。ガラスに絵があり、そこを双眼鏡で見ると、そのうしろの作品が見える。壁抜け、という言い方をしていて、様々な仕掛けがあるのが、何だかよかった。BBQというノート。後で雑誌で見たら、最初に写真などで撮った風景などを線で起こし、そして、その2冊目でその中のものを太い線にしていき、3では、あぶり出しによって動物や女性などに変化していくらしい。考えてみれば、そのあたりの創作の過程を見せるなんてある意味、すごく自信があるのだと、思う。

 

 4階。すぐそばの吹き抜けの、柱の上にも小さな立体の模型のような作品がある。これが「裏ツアー」などで、いろいろと説明してくれるようなものだ、と思っていた。

 暗い部屋にアニメーションが流れていた。トリエンナーレの時と同様に青木陵子との協同の作品だった。次々と移り変わるいろいろな像。線がからみあい、溶けあい、移りいく。何が面白いのかよく分らないのに、結構、見続けていても飽きない。そのビデオが一周回ると、それを確認した途端に出てきてしまうようなこういうものと違って、2周するまで2人で見ていた。不安定で、広がりがあって、それは頭の中の勝手な連想を具体的に図にしているようで、だから飽きずに見ることができるのだろうか?などと思ったのは後のことで、その時はただ見ていた。

不思議なことにどこかで見たような気もするのだが、でも古くは感じないし、といったことを考えさせない、というのは退屈しないということなのだろう。

 

 一通り見て、デイリープログラムに参加するために、2階で待った。塗り絵とあぶり出しと裏ツアーを1日でやると勘違いしていたが、それぞれ日によって違うのをここのエレベーターのはり紙を見て、初めて知り、そりゃそうだ。とも思う。

 

 5時を待った。5分過ぎた。人は結構集まってきているのに、始まらない。

 まだ来ない。そうこうするうちに20分以上がたって、帰ろうということになり、1階に行った。

 それがですね。前のワークショップが遅れてまして、それで40分頃になってしまうと思うんです。と説明をしてくれる。

 

 それで待つことにした。それまで10分以上ある。

 時間がさらにたって、団体が帰ってきた。伊藤本人も一緒だった。エレベーターがいっぱいになってしまうと思い、乗ろうとした。本人と妻とで3人になった。先に降りてもらった。

 

 そして、本人がテーブルや椅子を用意しだした。30分以上遅れて始まった。そして、テーブルと椅子などが用意され、結構人でいっぱいになり、中には子供が2人もいて、オレンジジュースを紙コップに注いで、筆を配って、人でいっぱいになった。かなり待ったおかげで、その空間になじみが深くなっていた。

 10個のどうぶつの名前を上げていき、途中で、妻が無邪気な発言をして、周囲にうける。ものすごく久しぶりに、あぶりだしをやった。チンパジーンというお題を選んで、描いた。考えてみれば、マイケルジャクソンの影響だと自分で分った。文子はシリマスを選んで描いていた。

 

 小さな電熱器であぶった。子供の絵はよかった。女の子のが特に。

 自分のをあぶった。何かごちゃごちゃしていた。「すみません」と思わず言ったら、「そんなにいわんでください」と伊藤本人に言われた。「筆とわりばしの両方使っているのっておもしろいですね」と言われたり、片足だけを上げないと動けないという設定を説明するのも過剰に照れてしまい、いい歳をして自意識過剰なところがまだあることに気がつく。だけど、だんだん絵になっていって、少しはそこに注目されるのって、やけに恥ずかしい。

 ほとんどが女の子で、そして、みんな手慣れた感じで絵を描いていた。

 文子のシリマスも、描いて、尻ますという洒落だった。

 

 ワークショップが終わって、時間もあるので、すぐに帰ってきたが、その際に、伊藤本人にも御礼を言われた。

 気さくで、2人の間で、株がものすごくあがった。

 作品も、時間をあけて、そして、何度も見た方が、面白く感じるようだった。

 行ってよかった。

 

(2003年の時の記録です。多少の加筆・修正をしています)。

 

ワタリウム美術館

http://www.watarium.co.jp/exhibition/0309zonito/index5.htm#

 

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