2019年9月20日。
妻も興味を持っていたのだけど、トークショーの資料として「動いている庭」という本があげられていて、それをすすめたら、読みにくい、難しい、と言いながら時間をかけて読んでいて、読み終わってからワタリウムに行きたい、ということで、たぶん1ヶ月くらいかけて読み終えたので、行くことになった。
Tシャツも買いたいと思って、サイズのことも調べていった。いちおう、ショップを見て、これほしいかも、と思ったりもしたけど、それでも、最初に展覧会を見ようと、ペアチケットを買って、2階から3階そして4階に順に回ってください、と言われる。
エレベーターを降りたら、ワインバーガーが草を刈っている写真だと思ったら、あとで、ベルリンのブランデンブルグ門のそばで、そこに背を向けて雑草に水をやっている場面だと知る。写真や、ドローイング。土が入った小さいコンテナみたいなところに植物が生えている。
窓から、道路の向こう側の空き地に、土がはいった袋が並んでいるのが遠くに見える。最初の展示室の入り口付近に、本人のことが書いている。「こどものころ、両親の農場で動物や植物、風習や儀式に接したのは、私にとり決定的な体験でした。そこには誰よりも父がいました。農地で働く日々の苦労にも関わらず、時間をとり、野草の標本室をつくっていた父が。思い出せる限りでは、私はいつも、絵を描いたり、植物を集めたり、甲虫の足を数えたり、動物の頭を煮込んだりしていました」(ロイス・ワインバーガー 2010年)。作者は農家に生まれ、鉄筋工の仕事をしながら、いろいろな活動をしてきた人らしい。都市でのプロジェクトで、アスファルトをはがして、荒地植物(イラクサとアカザ)を植えて、という写真がある。
それから、チラシの時から気になっていた「植物を超えるものは植物と一体である」(1977年 ドクメンタX、ドイツ、カッセル)の写真を見る。「使われていない100メートルの鉄道線路に、ヨーロッパ南部・南東部からの外来種を植えました。現代の移民の移住過程の比喩として考えたのですが、詩的で政治的な含意によりそれ以上のものを表現しようとも意図しました」とあって、写真も植物がすっと立っていて、花の赤い色みたいなものも見えて、きれいだったし、この意図もすごい新鮮だった。
植物はどこにでも生えてくる、という印象があるので、「ワイルト・キューブ」という作品の写真もあったが、ある場所に鉄のおりみたいなものを設置し、そこを人間が関与できないようにしていて、その内部が荒地になるという作品も魅力的だった。植物は、ずっといて、人類よりもはるか昔から地球にいて、動かないのだけど、ものすごく強いし、本当はコントロールできないものをコントロールしようとしてきた、みたいな歴史のことも思ったりもする。
3階には、写真もあって、実家の倉庫かどこかで発見した、ミイラを抱えている姿もあったりして、その印象は強かった。4階には、枯れたチョウセンアサガオを破壊する動画が流れていて、その乾いた音は、大きさもあって、けっこうこわさも感じたりする。そして、昔、この美術館で「エンプティーガーデン」という展覧会があって、外に歩いて、楽しかった記憶だけがあって、その時にこの美術館の屋上に、雑草の生えている庭ができていて、それを製作したのがワインバーガーだったと改めて知った。それを見ているときに、ここの館長が、たぶんアーティストに説明をしていて、その小さい箱に土があって、そこに草が生えているのは、そのエンプティーガーデンの時の、屋上の庭が、完全に乾いてしまって、もうだめかと思って、そのことを言ったら(作者に?)とにかく水をかけてくれ、といわれ、ずっとかけつづけていたら、こんな風に生えてきた、という話をしていた。
妻も一生懸命見て、私よりも理解が深いのではないか、といったような感じだった。
楽しかった。
(2019年の時の記録です。多少の加筆・修正をしています)。