アート観客   since 1996

1996年からアートを観客として見てきました。その記録を書いていきたいと思います。

「奈良美智:君や僕に ちょっと似ている」。2012.7.14~9.23。横浜美術館。

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奈良美智:君や僕に ちょっと似ている」。2012.7.14~9.23。横浜美術館

 

2012年7月23日。

 

 実はこの展覧会をやる、というような話は、かなり前から聞いていて、そして、かなり楽しみにしていた。もう11年前になるけれど、同じ横浜美術館奈良美智の初めての本格的な個展をやった場所で、その時には、作家本人のサイン会をやったりもして、そこに並んだことを思い出すが、つい昨日くらいの事のようで、そして、もうその頃から介護生活に入っていた、という事を思うと、自分が同じような特殊な環境の中にずっといる、という事も思うが、それでも、その後も、奈良美智の展覧会はあれば出かけ、青森まで行った時は、まだ介護しなくてはいけない人が2人いて、余裕のかけらもない時に、でも、いかなければ一生後悔すると思って、思い切って妻と行った。それからももう6年くらいはたっている。今、学生をしていて、これから先は分からない。だけど、同じようでも、作品は、かなり違って来て、その間も、奈良は観客として見ているだけだが、ぶれがなく作り続けている、という印象がある。

 

 去年は、3万円近くもした全作品が載っている作品集も買ったし、妻も奈良Tシャツを来ていて、もちろん自分も着ていて、ものすごくファンだとも思われていて、行ったんですか?と聞かれていた、というのもあるし、早めに行っておかないと、何となく、いろいろあって、行けなくなるんではないか、みたいな気持ちもあった。

 

 特急にうまく乗れて、1時間以内に着いた。平日なのに、けっこう人がいた。入り口には、大きな作品があった。記念撮影も出来る。そういうサービスは必ずあるのが、やっぱりすごいような気がする。ショップが、特別にいつものショップの外にも設置してあって、もう熱気があった。ほぼ女性。ショップの中にも人。いくつもの缶バッジをためらいなく買う女性。妻も、買っておかないとなくなるかも、と缶バッジ3つと、森ガール風のストラップを買う。

 

 それから会場へ入る。

 最初の部屋は、ブロンズの作品が並ぶ。重量感があって、ツイッターなどで知っていたのだが、これが、あの母校の美大で学生達と一緒になって製作した作品か、と思い、中には妻と、ちょっとどころか、かなり似ている作品もあったりして、そして、やはり、ブロンズであっても、奈良美智にしか作れない、というような、感じがする。さらには、いつものように、もうどこかで見たような気がするけど、でも見た事がない、というような印象もある。

 

 次の部屋は、少しかがんで入るような入り口になっていると、奈良のスタジオが再現されたような場所になっている。その裏の空間から音楽が流れてくる。その距離感がすごくて、その遠さがある分だけ、時間としての距離感まで遠くなる。出来そうで出来ない事。それが奈良作品なのかもしれない。その部屋にある、「in the milky lakes」がすごくよかった。なめらかな、重量感がある画面。そこにいる、いつものキャラクターが目を閉じて、でも、そのすごく悲しいような、そんな気持ちが伝わってくるのに、造形としては、完全にキュートの完成形に近い、そんな絵。しばらく見ていたし、最後まで見終わってから、また見に帰って来たのがこの絵だった。

 

 あとで確認をしたら、全部が去年からの新作だった。おそらくは、震災以後の。最後の部屋の大きい絵が、切なかったり、悲しかったりするのも、当然かもしれず、描けないらしい、というような間接的の間接的な情報だったが、今回の出品点数が、100を越えていて、いつもぶれないのは、やっぱりすごいし、見ている側の気持ちが正された気までした。

 

 その後、グッズも買ったし、カタログも注文したしで、すぐに7000円くらいになった。カフェに寄って、パフェとコーヒーにした。楽しかった。

 

 行ってよかった。

 

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2度目。「奈良美智:君や僕にちょっと似ている」。横浜美術館

 

2012年9月15日。

 

 始まってから、わりと早い時期に1度行った。その時、なんだか少しあせって見たような気もしたし、立体の良さを、本当に分かっていないような思いもあったし、実は思った以上に重要な展覧会ではないか、みたいにも考えるようになって、もう一度見たいと思っていた。義母が朝方気持ちが悪いと言っていたそうで、デイサービスには行けたのだけど、電話をいつもよりもマメに入れながら、みなとみらいに向かった。伝言がないから、大丈夫で少しホッとした。

 

 入り口に入る前に少し雨が降っていて、ロッカーに荷物を入れて、館内に入ったら、特設のグッズ売り場に女性がたくさんいて、また熱気を発していた。相変わらずすごいと、二人で見ていたけれど、秘かに再販しているのではないか、と思っていたチロルチョコらしきものと、のどあめらしきものが見えたので、それを伝えたら、その中に入って、ピンバッジもあって、妻は、これを待っていた、と言って買って、それから卓上カレンダーも買って、ポストカードも買って、チロルチョコものどあめも買って、キーホルダーもまた買って、あれこれ買ったら、会計が7000円を超えていた。さらに、スタッフが着ていたTシャツがいいので、売り場に見に行ったら、店内も会計に行列が出来ていて、出来たらお茶でも飲みたかったのに、それも無理そうなほど混んでいた。それから展覧会に入る。2度目だから、最初のチケットを見せて、リピート割引をしてもらった。

 

 最初の部屋は、立体。ブロンズの彫刻。1度目よりも、その存在がでかくて、でも自然で、考えたら、奈良美智は、このブロンズの彫刻で、しかも大きいものを作るのは初めてのはずなのに、ずっとあるような感じになっているし、こういう種類のブロンズ彫刻は、他にないはずなのに、今までも見た気がする、というのは、その絵画作品と同じ印象なのかもしれないが、すごいことではないかと思い、ゆっくり見られた。

 

 他の展示も、その絵の密度みたいなものは、すごく分かったし、重さみたいなもの、うまさや技術というものだけでなく、まるで立体感がある感じ、板に描いてあっても、その感じは変らない、じゃなくて、変るけど、印象の重みみたいなものがあると思って、作品として魅力があると改めて思った。もう一度、見に来てよかった。あとは、自分がやるべきことをやろう、と、そこでがんばろう、と思えた。

 

 

(2012年の時の記録です。多少の加筆・修正をしています)。

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