アート観客   since 1996

1996年からアートを観客として見てきました。その記録を書いていきたいと思います。

パープルタウンでパープリスム。2018.11.17~12.1。パープルームギャラリー 他。

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パープルタウンでパープリスム。2018.11.17~12.1。パープルームギャラリー 他。

 

2018年11月29日。

  前回のこのパープルームでの企画が、相模原の駅に着いて、そこから行き先を聞いて、そこに向って、鑑賞する、というパターンで、それがまったくの個人の部屋で、いつも住んでいる人が作品を作ったり、他の人のを飾ったり、というのが面白かったが、コレクターでもない中年が行っていいのだろうか、というようなことを思うくらい若い人たちばかりだった。だから、今回もそれを理由にちょっとちょううちょしていたのだけど、駅からツアー形式で、ということを知り、そうやっていくつもの場所を回るというのが、今年の冬に福島に行って見たカウスラウンジの展示を思い出して、人手を使って、こういうパターンを提示できるのは、すごいと思った。何かの可能性が伝わってきて、それは体験しないと分からないいろいろなことがあると思い、すごく行きたくなって、行くことにした。

 

 電車に乗って、乗り換えて1時間以上かけて、相模原に着いた。これから歩くから、汗をかいたシャツを着替えて、駅の改札を出て、ドトールに向う。何カ月か前に来て、この外にある感じの席があるところで、待ち合わせで、人が集まりやすい。「予備校生」が首からカードをぶら下げて名前も書いてあって、2人はスタッフがいて、その周りに参加者らしき人もいた。こんなにいるんだ、と思ったが、その中で会話もしているけれど、私は最小限の話だけをして、イスに座らせてもらって、何か注文しなくていいのだろうか、と思ったりもして、ただ、待っていると、「予備校生」の一人が失踪したという話を聞いて、事故かどうかを確認もしてしまったが、どうやら逃げたようだった。無事ならいいのだけど、それが、夏にチラシを配っていた吉田17歳という人で、まだ半年くらいなのに、と思った。

 

 午後5時になって、スタートする。

 ツアーを先導してくれたのは、わきもとさんという「予備校生」で、若い女性。前に歩いて、そこに知り合いらしき若い男性が2人歩いていて、若い男女はカップルではないみたいだけど、知り合いらしく話しながら歩き、若い男性は隣に歩いていたけど、話しかけないで欲しい、という感じだったので、黙って歩く。

 

 歩いて、最初は、アパートにつく。パープルームビオトーク。作品が並んでいる。カーテンに絵画らしきものを描いている人がいる。壁にある作品が、完成度も高く、面白い。あれこれを見て、6人もいるから部屋は狭いが、何となく遠慮しつつも、ノートを使った作品があって、このスペースだけでも面白いものが作れることに感心もして、写真も撮っていいですよ、ということで、他の方々はバタバタと撮影していたが、私はカメラもスマホも持っていないから撮らず、ただ見ている。

 

 この前よりも整理されているように感じるのは、ゲスト作家が何人もいるからかもしれない。部屋のすみの壁にたてかけられていた絵がよかったら、この部屋の住民でもあるシエニーチュアンの絵だった。この前も、習作みたいなものがよかったのだけど。

 

 そこから別の会場に向う。あとで思い返すと、どうやって道を歩いたのか覚えてないくらいだけど、次に行ったのが、そのツアーを先導してもらったわきもと氏の部屋で、パープルーム1 3/4だった。部屋の中が部屋でなくなるくらいの変り方をしていて、展示会場として強いものになっていて、テーマは、この土地のあたりの空き地らしくブロックの立体が並ぶ。ここで相模原の相続争いのことを思い出す。このあたりは、個人が所有するには広めの土地、そして、地価の上がり方、そのバランスのために争いになりやすいのかも、といったことを思ったりもした。この部屋の住人は寝袋ですごく狭いところで寝ていて、梅津庸一のキュレーションの暴力性という言葉も出たが、すごくよく出来ていると思った。どうやらキュレーションという言葉は、ケアから来ているらしい。

 

 そこは、マンションの5階。エレベーターは狭いので階段で登ったが、帰りも階段を降りた。そこから、また歩く。時々、マンションをそのまま少しだけ改装をしたラブホテルがあったりもして、妙な街な感じはしていて、人工的になりきっていない印象があった。

 

 パープルーム君の肩に乗る船 。カギをあけているが、ここが失踪した吉田十七歳の部屋らしく、そこには、偶然だけど、吉田と、以前失踪した「予備校生」の肖像画が並んでいる。そして、写真がはられていて、それも展示のやり直しが梅津から指示されたらしいが、出会い系にはまっていて、その場所をまた訪れて写真を撮って、それを並べたりしていて、だけど、その部屋の展示と、失踪して、まだ食器もあったりして、いろいろな意味で、とてもすごい展示になっていたと思った。

 

 そのあと、しばらく歩いて、国道16号線で先導したわきもと氏は、さようなら、とここでガイドは終了ということであとは歩いた。かなり歩く、心細くなったが、何となくグループで固まっていき一人だけ、先に行ってしまったが、でも、まだかな、というところで曲がった。

 

 パープルームギャラリーでは、原田さんという実在の今の70歳になる人の人生を作品にしていて、そこから、またパープルーム予備校がその裏にあり、そこが梅津の本拠地でもあって、いろいろな作品が並んでいて、中でも、祖父の弟が真珠湾攻撃で亡くなっていて、それをテーマにした真鍮で描いた、今ではわずかに変色していて、それも含めてすごかった、と思った。ここからいろいろなものを作ったのか、いろいろなことを思い、あとは 見晴らし小屋に行き、パープルーム予備校の1期生・安藤裕美の部屋だとも思うが、梅津から、吉田の失踪の原因のようなことも聞いた。ギャラリーでは、その吉田の文章、これまでの自分の歩みを書いた文章がよかったのに、とも思った。

 

 帰りは、そこから途中でコンビ二でトイレを借りて、駅まで歩いた。あまり人が歩いていない広い道の歩道を歩くのは、心細い。妙な孤立感がある。そういうことを、味わえたことも含めて、楽しかった。人手、と今のSNSが可能にした、展示だった。

 

(2018年の時の記録です。多少の加筆・修正をしています)。

 

www.parplume.jp

 

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