アート観客   since 1996

1996年からアートを観客として見てきました。その記録を書いていきたいと思います。

「六本木クロッシング2010展:芸術は可能か?―明日に挑む日本のアートー。2010.3.20~7.4。森美術館。

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六本木クロッシング2010展:芸術は可能か?―明日に挑む日本のアートー。2010.3.20~7.4。森美術館

2010年6月17日。

 少しタイトルが大げさというか、人を集める気でいったら、大丈夫だろうか?みたいな事も思うような文章だけど、その参加するアーティストを見て、見たいと思っていた。美術手帖会田誠が、いい、と言っていたし。それに、若い知人も、面白かった、とも言っていたし、3月からやっていて、長くやっているから大丈夫などと思っていたけど、あと3週間くらいになっていて、油断すると見損なってしまうパターンでもあるので、今日は授業もないし、天気も梅雨の間でちょうど晴れているし、で、妻と出かけることにしていた。義母が無事にデイサービスに行ってくれたので、午前11時頃に起きて、昨日、出そうと思っていたメールをうってから、昼少し前に出かけた。

 

 久しぶりに美術館に出かける。六本木は、意外とウチから近く、定期も微妙に使えるし、なんだかちょっとうれしい。久しぶりに行くので、いつ以来だっけ?という話になったら、妻の記憶も混乱していて、伊藤若冲が、とか、それは出来たばかりの時の話などをしていて、もしかしたら、銀行のコレクション展とか、そういうのを見て来て以来、かもという話に落ち着き、六本木駅で降りて、地下を通って、エスカレーターを上がって、美術館とか展望台に行く入り口を登って行ったら平日なのにかなり人が並んでいて、一瞬やめようか、と思ったくらいだった。

 

 同じビルでやっている印象派ボストン美術館展、というのが人気だったらしく、というのが分かって来たので少し落ち着いてきたけど、その展望台が、カップルのための場所みたいに有名になっていたのを知らなかったが、この前、若い知人がここでデートして告白された、というのを思い出し、その場所だけで、その行動が分かるような場所になったのだろうか、と思い、列に並んだ。

 

 学生証を見せたら、年齢に関わらず学生の値段で入れた。嬉しかった。エレベーターに乗り、降りたら、人の流れはボストン展の方に行き、そっちに行っちゃダメなのかも、などと思って逆に進んだら、何もなく、ボストン展へ向かって途中のすき間のようなところを通っていったら、美術館で確かに人が少なく、正面のスクリーンには「チンポム」の作品が流れていた。からすの鳴き声をメガホンで流し、からすの模型を使う事で、バイクに乗りながらそれを渋谷とかいろいろな場所で行うことで、びっくりするほどからすが集まってくる様子が映っていて、確かになんだかすごかった。

 

 そこから入り口を入ったら照屋勇賢の作品があって、紙袋を細かく切って樹木にしていく作品で、5年前のも透明の箱に入っていて、それなりに古くなっていたが、このシリーズはよかった。

 

 それから、相川勝という人のCDジャケットも、中の文も全部。自分で精密に手描きで描いて、歌も楽器の部分まで声で何とかしてしまった音楽が聞けて、という作品。

 

 高嶺格の、自分が在日韓国人2世の女性と結婚する時の事を写真と、文章で表現した作品。この人は政治的などと言われるのだけど、この人が介護を扱ったら、かなり繊細な部分にまで迫れるのではないか、という気がするようなアーティストで、いつもその作品は気になる。

 

 そして、今回、おそらく時間がたっても忘れない作品は、「ミチコ教会」というビデオ作品のはずだ。八幡亜樹。どこかの山の中の、ほとんど小屋としか思えない作りの小さな教会があって、そこに2人の夫婦が40年以上暮らし、何年か前にその夫が死に、70歳を越えたその妻が、ここに暮らして、でも無理だから街に出て、でもまた戻って来た、というような話だった。途中で、そこで結婚式をあげた夫婦や、妻だけがそこの教会にあると思われるドレスを着て、夫は普段着で、というカップルが出て来て、そこにある指輪や、建物の細部がなんだかよくて、そして夫の事や、自分のこれからを語るミチコさんの言葉や、姿や、いろいろな映像がホントになんともいえない気配を出している。

 

 妻と話していて、神に誓う、という行為が出来ないかもしれないけど、この教会があったら、式をあげるかもね、という話になった。この教会を作った夫も、実は正式な牧師でもない、という内容まで語られたけど、でも、大げさな言い方だけど、神が降りるとすれば、ここだろう、という感じはずっとしていた。最後は、ここで式をあげたカップルが赤ん坊を連れて来たシーンで終わった。ここは、こういう企画をやるので、いい美術館だと思うけど、夏に来ると、冷房がウソみたいに強いから、それをなんとかしてほしい、といつも思う。

 

 

(2010年の時の記録です。多少の加筆・修正をしています)。

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