アート観客   since 1996

1996年からアートを観客として見てきました。その記録を書いていきたいと思います。

「ここにいるあなたへ」キュンチョメ個展。2021.3.11~4.18。横浜の民家。

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「ここにいるあなたへ」キュンチョメ個展。2021.3.11~4.18。横浜の民家。

 

2021年4月18日。

ずっと気になっていた展覧会だった。だけど、いろいろと体調が整わず、行けなかった。それであきらめていたら、会期延長になり、そして土曜日に行こうと思っていたのだけど、やっぱり行けず、もう一度、あきらめていたのだけど、日曜日に起きて、やっぱり行こうと決めた。2011年の東日本大震災以来の作品が一堂に並ぶらしい。

 

 いい天気だった。ただ、会期延長したのは、かなり人が来て、コロナ禍なので、民家を使っているということで、感染予防のために入場制限などもあり、そのことは必要なのだけど、2時間待つ、という情報もあったので、行くのが怖かったけれど、午後12時から始まるらしいので、午前11時に出かける。新しい靴を履く。反町から、知らない道ばかりを、こわごわと歩くけれど、キュンチェメのTwitterにあった映像をプリントアウトしてきたから、それを持って、午後12時10分に路地の中に、急にあった。

 

 受付に、キュンチョメの本人がいて、でも、もう「満員」だった。30分くらい待つことになります、と言われ、入場料500円を払い、携帯の番号を聞かれ、持ってないというと、隣の会場の前のイスに座って待つことになる。もう一人のキュンチョメがいた。

 

 午後12時25分に呼ばれ、会場に入る。

 「DO NOT ENTER(2013)」

  海岸で、自分で立ち入り禁止のテープをはって、そこに境界線を作って、作家が動いている。

 「遠い世界を叫んでいるようだ(2013)」

  2年経っても、福島では、あちこちが廃墟のようになっている駅などもあり、そこで、作家が、遠吠えのような声を出す。あちこちで、呼ぶ。

 「人という字は(2013)」

 ガレキがあって、そこにスプレーで、「人」という文字をずっと書き続ける。

 

  大震災で、さらに原発事故で、今も終わっていない災害に対して、どうやって関わるのか。それを、おそらくは試行錯誤で、それでも、関わり続けようとしている姿が、映像として残されている。

 

 2階へ上がる。

「New Japan Paradise(2012-13)」

 クルマで向かう少し山の方には、フレコンバッグが無造作に見えるほど積み上げられている。そこにスプレーで丸を描き続ける。音は、年越しを祝うような音声がずっと流れている。そして、年越しの瞬間、その映像は明暗が反転し、黒いフレコンバッグが白く見えて、日の丸のようにも見える。

 

ナマズ君の誓い(2012)」

 地震を止めてほしい、とナマズを購入し、約束してもらい、海へ放す、という映像。鹿島神宮で、巨大ナマズを止める、という割には、とても小さい石だったことを初めて知る。

 

 海のそばを歩き、そこで金属探知機で、アクセサリーなどを探す。そして、その場所にわすれなぐさを植えていく。鎮魂の作業にみえる。

 

「海の時間(2014)/街の時間(2015)」

 2年経っても、3年経っても、そんなに変わらないまではいかないけれど、だけど、復興からは遠いようにみえる。

 

「僕とこいのぼり」(2014)

 昔、家にこもりっきりだったことがあったキュンチョメの男性の話。大震災によって、家が一部壊れ、そのせいで、子供時代に毎年あげていた鯉のぼりが出てきて、その話と、最後は、それを体につけて、スカイダイビングをする、という映像。

 

 最初の家でゆっくり見られた感じがしたら、1時間10分かかっていた。

 

 次の家に行く。

 午後1時30分。

 「立ち入り禁止区域に除夜の鐘を鳴らしに行く」(2013-14)。

 岡本太郎美術館で見た時は映像があったけれど、今回は音だけだった。

 

 中でも、印象が強かったのは「空で消していく(2017)」だった。

 それは、大震災に関してのインタビューで、さまざまな人が出てくるのだけど、地元の大学へ行って、いわゆるヤンキー色が強くて、違和感があったり、助かったのは必然、という男性は、反対が嫌い、といったことを語李、石巻に住んでいるのだけど、震災の時に地元にいなくて、そのことで居心地の悪さがあったり、とこれまで聞いたことがないような言葉を聞いた。

 

 2階。

 最後に「避難指示区域にタイムカプセルを埋めに行く(2011)」があった。

 

 そこには、小さい明かりで照らされた手紙のようなものが机にある。

 タイトルが、「ここにいるあなたへ」とある。

 中にパーティーグッズを入れて、そのタイムカプセルを埋めに行っている。

 その行為を文章にして、ここにある。

 ずっと映像作品で、そして、これは最後に上品な印象が残った。

 

 他にも、作業をしながら話をすると、予想もしないような話が出てきて、キュンチョメのインタビュー能力の高さが、とても高くて、そして、生身で介入する感じが新鮮だから、もしかしたら、古くならないのかもしれない、とも思った。

 

 全部見たら、午後2時55分だった。

 

 来て、よかった。

 

 

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