パルコ・ギャラリーにまた行った。
自分が仕事をしていたサッカーの専門誌にも珍しくその展覧会の紹介がある。
テーマはサッカー。
ジュリアン・ジャーメイン。
何枚も写真が並ぶ。見ている。少し時間をかけて見る。
土のにおい。
夏のグランド。
思い出した。
サッカーボールを蹴った感触。
自分とは、全然、関係ない地域なのに、妙になつかしく心の中で少し笑っている。
いいなあ。こういうの。
写真家のことも、チラシの裏に載っている。
『イギリスのイプスウィッチ育った彼は、子供の頃から今にいたるまで町の名前そのままのサッカー・チーム“イプスウィッチ”の熱狂的ファンである。幼い頃、サッカー選手になることを切望していた彼は成長するとサッカー選手にはなれなかったけれどもアーティストになった。アーティストになったことで、違った角度でサッカーと親しくなることもできた。
丘の上から遠くスタジアムを見下ろす少年たちの後ろ姿。小雨が降った後のフィールドに残ったいくつものスパイク後。少年プレーヤーや年老いた日曜プレーヤーの楽しげな姿。あるいはブラジルの赤い土の上にのこる幾つもの小さな足跡など。スタープレーヤーの姿や目もさめるようなシュートの瞬間もないけれどサッカーを中心とした普通のリアルライフがそこにある。“サッカーはロマンスやファンタジーとは何ら関係ないけれど”とジャーメインは語る。“でもそこには僕のリアルライフの中での輝かしい瞬間がある。』
とてもいい感じだったので、広告も載っていたサッカー専門誌の編集部へ行った時、その話をした。そうしたら、その展覧会に行ってないだけでなく、視線をそらし興味すら示さなかった。
展覧会の紹介だけでなく、ジャーメインのような写真が載っている雑誌なら、とても魅力的だと思えるのに。
(1997年の時の記録です。多少の加筆・修正をしています)。