アート観客   since 1996

1996年からアートを観客として見てきました。その記録を書いていきたいと思います。

「アート・スコープ2007/2008」― 存在を見つめて。2008.6.28~8.31。原美術館。

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「アート・スコープ2007/2008」― 存在を見つめて。2008.6.28~8.31。原美術館

2008年8月21日。

 

 久しぶりの原美術館。ちょっと振り返ると、ちょうど1年くらい前だったのを思い出す。そして、同じように友人を誘ったことも思い出す。今日も妻と一緒に、その友人と五反田駅で待ち合わせた。今日、もしかしたら来れないかも、と思っていたから、改札ではない方向から笑顔でやってきたのを見た時はうれしかった。

 

 そして、バスに乗って、途中でソニーの建物がなくなっているのを見て、ちょっと驚き、御殿山で降りて、原美術館へ向かう。1年前に来た時は暑かったかどうかもあまり覚えていない。今日はセミの声が聞こえる。平日だから、人はあまりいないように入り口から中のミュージアムショップをのぞいて思う。

 

 入り口に包丁がさしてあって、そこにオオゴマダラの蛹の抜け殻がぶらさがっている作品がある。最初の部屋には、松の小枝で文字が壁に並ぶ。本の木の絵を細かく切り抜いている。3年前の横浜トリエンナーレでファーストフードの袋を切り抜いて木の形を作っていて、以来、気になっている照屋勇賢の作品。でも、ああいう感じを観客として期待していて、だから大変かも、などと思い、それなのに2階へ上がった時にトイレットペーパーの芯を切り抜いて作った樹木の作品に喜んでしまった。

 

 1階には、他には加藤泉の作品。久が原で見てから、けっこう好きで、あの時はポストカードを買って、まだ誰にも出せずにいるが、特に今の立体はラブリーに近づいているのは、おそらく作者に子供が出来たりしたせいかもしれない、などとも推測が出来、そして友人には好きではないけど、この方向へ行くのだったら、前の方がいい、という話も聞いた。こういう変化が、作者本人の本当に望む方向なのだろうか。胎児のような、と美術雑誌などではよく表現されていて、今も確かにそういう風に見える絵だったり、立体だったりした。今年、制作されたものばかりのようだった。

 

 

2階の常設の作品は宮島達夫の部屋に入るとむわっと暑く、白いタイルばりの部屋もさらにもわっとしていた。

 

 そこには、ビデオ作品があった。

 人が飛び降りて、まじっていくような姿をあいまいに、スローモーションで続いているもの。いくつものモニターがあって、そこに一人ずつ人の顔がうつっていて、それがこちらを不信感に満ちた表情でゆっくりと見る、といった作品。あまり幸福な感じはしなかったし、ダグラス・ゴードンやビル・ビオラといったビデオアーティストの作品と似ている印象だった。エヴァ・テッペ。

 

 2階の奥は、窓が開けられて、セミの声が聞こえる中に、墨と黒鉛で描かれた細かい絵が並んでいた。表現行為の基本を再確認するような繊細で緻密なドローイング。という説明文があると、なんとなく意味があるような気もしてきたが、でも、ものすごくあっさりとした絵にしか思えなかった。奈良美智の部屋も見てきた。須田氏の作品は、今回は椿に変わっていた。それもくたびれた花になっていた。

 

 全体的に、わりとあっさりとした感じだったけど、美術館に来た、という感じはした。でも、1時間弱で全部見終わり、ショップを冷やかして、前から欲しかった奈良Tを買った。5000円もしたけど「奈良さんのだから」と妻が言った。他のTシャツだったら許されなかったような気がする。それから食事をする事にした。

 

 ランチプレートと今日のパスタ。 

 妻と友人はランチプレートを食べた。

 いろいろ迷ったが、案内された席が冷房のそばだったため、外で食べた。曇っていたので、それほど暑くなく、リゾートに来た気持ちになった。セミがないていた。食事が終わる頃、太陽が照りつけてきたので、ウソのように気温が上がり、中へ入れてもらう事にして、そこでコーヒーとイメージケーキを食べた。

 

 夏の最後にいい日がおくれた。

 そこから品川まで歩いて、ガード下にラーメン屋が並んでいるのを改めて見たが、でもホントに露骨なまでにガード下だった。線路を支えるコンクリートがそのまま屋根になっているのがハッキリと分かった。

 

 品川駅で友人と別の方向の電車に乗った。

 妻と二人で楽しかったね、と言える一日だった。

 それから、義母がデイサービスから帰ってきて、そして、車イスをひいて買い物に出かけた。

 夏がおわるんだな、という気持ちになった。

 

(2008年の時の記録です。多少の加筆・修正をしています)。

 

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