アート観客   since 1996

1996年からアートを観客として見てきました。その記録を書いていきたいと思います。

BARACK OUT。2016.12.9~12.25。旧松田邸。

f:id:artaudience:20211202100730j:plain

BARACK OUT。2016.12.9~12.25。旧松田邸。

2016年12月23日。

 

 たぶん会田誠ツイッターで見たと思ったけど、ほとんど知らなかった展覧会だったが、なんだか評判が良さそうで、行くことにして、妻と相談して、出かけられた。

 

 今年はチンポムの作品が歌舞伎町の真ん中といっていいビルを壊す時に、その床の真ん中に穴まで開けていた個展が、思った以上によくて、その街の思い、といったらキレイすぎるのかもしれないけれど、歴史という遠さではなく、時間の流れが形として少し見せてくれる、といった感じなのかもしれない、などとも思えて、その土地のことを明確にするアートの流れがあるらしく、新鮮さは確かにまだある。

 

 住吉という駅。もしかしたら初めて降りた駅。そこから橋を渡って、細い道に入って、たとえば自分の家の近所の光景と似ていて、その似ている、という要素が何かは、はっきりとは分からないが、やっぱり似ている、と思ったら、ブルーシートみたいなものに覆われた現地に着いた。その家は、外側に、タンスの引き出しみたいなものなどを使って、大きめの階段となっていて、ものすごくもろそうに見えながらも、登るとけっこうしっかりと作られているのは分かって、それは会期が二週間くらいだけど、十分に耐えられる作りだろうな、とも思って、二階に入ったら、そこは小さな屋台みたいで、そこで500円を払い、そこにある作品を見る。カオスラウンジ以降、という感じの作品が並んでいる。そこで、タオルを買った。

 

 そこから1階へ降りる。2階ではちょっとピンと来なかったが、1階へ降りると、不思議な空間になっていた。小さいはしおきみたいなものが床一面に広がっているような作品で、そこに穴があって、水が吸い込まれているような構造になっていて、それで音がしていて、しかも、その家に昔からあるような空間にすらなっていて、そこから、歩いて、くぐって、けっこう広くて、あれこれの作品があって、萌え絵のマンガがあったりもして、そして、ドラえもんのしずかちゃんの絵がある。ゴミの写真、シリアスそうな映像。あれこれ見て、出口を出た。よくこれだけの作品を作ったな、というのが素直に感心もして、外にある表彰状らしきものを並べてある小さな小屋の中にいるスタッフ(アーティストかもしれないが)に説明を聞いた。

 

 ここは、4代前の人が建設して、その人は満州から引き上げる時に、他の人まで助けたような人で、のちに区議会議員となって、それもトップ当選で、70年代に、ゴミ戦争みたいなことがあって、そのために戦った人で、かなりの、いわゆる「偉い人」だったらしいが、その孫にあたる人が、この家をゴミ屋敷にしてしまって、そこをそのさらに子供の世代の人が関係者で使うことにした、というのだけど、それは、不思議というか、皮肉というか、それ自体が一つのストーリーにもなっていた。

 

 午後4時を過ぎていたら、いわゆるギャラリーツアーといったことを始めていて、そこに合流させてもらった。そのことで、作品の多くが、東京大空襲や、関東大震災に関係があるものだというのを知った。この土地に関係していることを作品化するというのが、今のサイトペシフィックという流行なのかもしれないが、だけど、たとえば、はしおきみたいなものがちりばめられている展示は、この近くの公園に、東京大空襲の際に、一時、遺体が埋葬されていた、という事実に基づき、その時の死者の数を伝えるような作品になっていたりして、本当に災害や戦争があって、この70年くらいは奇跡的に平和だったんだ、とも思ったが、災害の被害を最小限にすること、戦争を起こさないように、関わらないように、ということはできるのだから、といった気持ちにもなったが、気がついたら、1時間以上、会場にいたけど、あきなかった。

 

 

(2016年の時の記録です。多少の加筆・修正をしています)。

school.genron.co.jp

 

www.amazon.co.jp