アート観客   since 1996

1996年からアートを観客として見てきました。その記録を書いていきたいと思います。

特別展「光悦 桃山の古典」。2013.10.26~12.1。五島美術館。

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特別展「光悦 桃山の古典」。2013.10.26~12.1。五島美術館

 

2013年11月28日。

 橋本治の本を読まなければ、日本の昔の美術に興味も持てなかったかもしれない。ただ、源氏物語絵巻のことを読んで、その影響がありすぎたのかもしれないが、実物を見て、そのボロボロの巻物の線にすごく豊かさが見えた気がして、びっくりして考えたら何百年かの貴族の蓄積があって、その洗練さが少し伝わって来たようにも思えたが、それは橋本治の文章の力なのかもしれない、などとも感じたが、でもそこにただごとでない作品があるのは分かった。それから昔のものにも興味が持てるようになったし、そのことが能楽への見方にも変化をもたらしたのかもしれない。

 

 妻が日曜美術館本阿弥光悦の特集を見て、こちらから言わないのに興味を持ってくれた。筆を工夫してオーダーメイドで作らせたり、職人を集めた街を作ってみたり、ということにグっと来たみたいで、それなら行こうと誘って、さらには現代のセンスのいい人である友人を誘ったら、一緒に行けることになった。

 

 上野毛の駅のデザインは、あとで調べたら安藤忠雄だそうで、かんぐっているだけかもしれないが、丹下健三が亡くなってから急に東京での仕事が増えた気もして嬉しい気持ちもするが、渋谷駅が乗ったり降りたりが不便になってしまったので微妙な感じに勝手になっている。駅のポスターの上に「大変混雑しております」という紙がはってあって、ビビっている頃に友人もあらわれた。

 

 そこから五島美術館までは5分くらい。途中で出来たら行きたいサンドイッチ屋さんの前を通ってから、五島昇の豪邸の隣が美術館だった。前の印象では交番が門のところにあったはずだけど、今回は見当たらなかった。中に入ると、けっこう人がいて、でもこのくらいならと思ったら、展示室に入ったら人がびっしりといた。どの作品の前にもまんべんなく人がいて、という状況だった。平日の昼間なのに。

 

 書が並んでいて、それは光悦が、それこそ「就職よろしく」みたいな手紙なのに、それが掛け軸に飾られたりもしていた。それはちょっと笑ってしまうような事でもあるのだろうけど、その文字はカジュアルだけどきれいで、何より自由な感じはした。そして、キレイな色紙の上の字は、ものすごく本気を出していて、それでも柔らかくて、やっぱりどこか自由さはあって、美しかった。

 

 同じ人が書いたとは思えないようなバリエーションで、それが自然だった。そこに要求されるものを自然に提供できる、というような「自分探し」的なものとは対極にあるような感じにも思えた。やっぱりセンスがいい、というより、どこか恐い人でもあるのだろう。

 

 すずり箱は、あえて鉛を使っていて、それで思い切って、ウソみたいに盛り上がった形にもなっていて、これが出来るのがカッコいいと感じた。スキがないし、ケチのつけようがない、というか、この人がやっている事に疑問をはさんだら、その方が間違っているというような感じになってしまうのだろう、とも思う。

 

 生まれが豊かで、それを生かしきったという例かもしれない。それに桃山時代から江戸時代初期の「町衆」ということらしいが、町衆って、なんだろう、とは思うが、なんでも出来たけど、プロデューサー的な人かもしれない、などとも思うが、こんなに人が来るとは思わなかった。

 

 

(2013年の時の記録です。多少の加筆・修正をしています)。

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