アート観客   since 1996

1996年からアートを観客として見てきました。その記録を書いていきたいと思います。

また明日も観てくれるかな? Chim↑Pom Exhibition 。2016.10.15~10.31。 新宿歌舞伎町1−19−3

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また明日も観てくれるかな? Chim↑Pom Exhibition 。2016.10.15~10.31。 
新宿歌舞伎町1−19−3

 

2016年10月30日。

 広島での対応のことで、悪ふざけが最初のはずだから、それを徹底しなかったところが、どうも好きになれないが、カラスを集める作品とか、スーパーラットとか、とてもその土地に根ざしていて、というよりも、そこにあるものを分かるようにしてくれて、それはとてもすごい作品だと思っていて、今回も歌舞伎町で、取り壊す予定のビルで個展をやると会田誠ツイッターで知って、やっぱりすごいと思った。

 

 歌舞伎町には、着いたのは午後6時を過ぎていた。特にここ10年以上は介護をしていて、社会から隔絶された時間も長かったし、少し社会復帰をしたとしても、細々としたものだし、その上、アルコールを一切飲まなくなったので、夜の街に行く回数が減った。人と会ったりする時は出かけるが、それ以外は家にいて、介護をしているか、何か、こうして原稿書いたり、勉強したり、勝手に研究をしてみたり、とかしていて、何しろ圧倒的に家にいるから、こういうことがなければ歌舞伎町には来ない。

 

 少し歩いて、会場を見つけた。人が並んでいて、最初は別の飲食店の列かと思った。後ろに派手で、フラットな話し方をする2人の若い女性が並んでいて、「もう1回見たいと思ってたんだ。サラリーマンの人とか、なんで並んでるかわかないよね」とやや早口でしゃべっていたら、「あエリィだ。かわいい。ちいさいんだ」というような会話をしていたら、前方にチンポムのメンバーが歩いていた。後ろ姿になってしまっていたけど、初めて見て、こちらもひそかに気持ちがあがる。

 

 受付では同意書に名前を書く。小さい字でよく見えないけど、ケガをしたりしても訴えません、みたいなことだと思い、こういう手続きをしないと開けないけど、こうしたところはちゃんとクリアしているんだと思い、そのあと、入場券かわりに手の甲にスタンプをおされ、それがちょっとうれしい。

 

 そこから、隣の入り口に行くと、エレベーターがあって、エレベーターガールがいる。寒い中、ありがとうございました。といった丁寧な言葉を向けてくれたので、こんなに混んでいるんですね、と返したら、明日が最終日で今日は日曜日なので一番混んでいるのかもしれませんと比較的柔らかい表情で答えがかえってきた。

 

 4階に上がる。青写真を使った展示。このビルは、歌舞伎町振興会の事務所があるビルらしく、そして、あとになって、他の展示と合わせると、歌舞伎町は娯楽の殿堂でもある歌舞伎座を招致しようとするプランがあったらしく、そして、このビルも東京オリンピックの前年に出来たらしく、今の歌舞伎町とは違う雰囲気の場所にしようとスタートしたらしかった。ここは東宝ビルの裏だから、歌舞伎町のど真ん中で、その青写真は青写真のままで、違う方向へ、でも歓楽街としては、すごく発展したんだと思う。

 

 全体が青く、薄暗く、床の真ん中が吹き抜けのように四角く、大きい穴が1階まで開けられていて、恐さもあるが、それだけで緊張感みたいなものも出て来るし、下の階の映像まで見えたりして、広がりもあるし、窓の外には交番も見える。こんな場所で外からは分からなかったが、取り壊し予定でないと出来ないことをきちんとやっていて、銀座の資生堂ギャラリーが壊れかけたビルの形を使って展覧会をしていたが、それよりも徹底して、ビル全体を使っているから、その分凄みが強い。

 

 3階にはスーパーラット。ネズミのはくせい。部屋の隅っこには、ねずみ取りの中にどうやら本物のネズミ。「これ本物?違うんじゃない?動いたよ」。きゃーまでいかないけど、驚きの声があがる若い女性。チンポムがこのネズミをつかまえたのが、確か渋谷で、その時の映像が流れているが、ゴミ捨て場にウソみたいにたくさんいて、つかまえる時には「ぎゃー」という声をあげながらエリィが逃げていたりして笑ってしまうけど、面白い貴重な映像だったりする。

 

 その階には、エロスをエネルギーにしている機械みたいな作品とか、ホストが女性をほめるために描いた似顔絵とかが並んでいる。デリヘル嬢のみらいちゃんの青焼き。クラインみたい。でも、未来、という名前の風俗嬢が選ばれている。

 

 2階。都市は人なり。という作品。それは、この歌舞伎町の元々目指した街のことが書いてあり、これだけ違ったものに、だけど、他にはなかったり、独自性の強さはある街にはなったりとか、いろいろなことを思わせて、その上で、次のオリンピックまでに浄化されるということになっているらしいが、そうなったら、また変わっていくのだろうか。みたいなことを思って、意図と欲とエネルギーと要素が多過ぎて、人のコントロールがきかないんだ、と思ったりもする。自動掃除ロボットが汚すようにペインティングをしている。1階は、ビルバーガーという名前の巨大な作品。真ん中の切り取った部分を重ねている。

 

 これだけの規模を自主運営でやりとげた凄さ。そして、作品も、違うことをやりました、だけでなく、この土地ならではのものにしていて、この街のことまで考えが及ぶようになっている。すごい。個人的に、嫌いなどと言っているのがちっぽけに思えてきて、申し訳ない気にもなる。カタログも、この現場の雰囲気が出ている写真が並んでいて、1300円だったし、妻にも見せたいと思って、買った。外には、顔出し写真が、指名手配の写真で出来ている作品があった。外にはまだ人が並んでいた。

 

 

(2016年の時の記録です。多少の修正・加筆をしています)。

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