2018年11月18日。
薄いビニールがかかっていて、どこから入るのかよく分からないけど、そこをのれんをくぐるように歩くと、そのすき間に作品がある。中に入ると、その中にいたスタッフから、ステートメントなどを渡してもらって、その入り口付近の作品は、小林真行の『図鑑建築』だと知ったが、薄いビニールがまとわりつくことが気になって、あまり見えなかったし、ちょっとピンとこなかったのは、作者から何かを聞くことができなかったせいだと感じた。
向こうに見える動画は、「還らぬ土を返そう」という福島出身の木村文香のパフォーマンスの記録だった。
そして、「アーティスティックインカム」という作品は、F・貴志という作家で、ずっと声が響いていて、どのようなことをするのかがかなり分かっている状態だったけど、この「インカム」を受けたかったし、というのは何か欲しいというよりも体験として味わいたいと思うような言語活動でもあったからで、まずはさいころを振らせて、奇数か偶数かでペプシの征服されたコカコーラか、コカコーラに制服されたペプシコーラかをもらい、そこから「インカム」として衣食住に関するものを、それぞれ観客に選ばせて、それに対応する自作のステッカーや、バッジをくれて、それは楽しくもあるし、しゃべり方が傍で聞いていると頑張りすぎのようにも思えたが、正面で聞いていると、ああ本当なんだ、と思えたし、最後に耳にスタンプのインクをあてて、耳型まで押してくれたハガキもくれたし、なにかしら、御礼というか何かお返しみたいなものを、という話をしたら、考えたら、そこでお金を渡したら資本主義になってしまうし、と思ったら、考えて話をしてくれて、10年後くらいにベーシックインカムに賛成や反対の投票みたいなことがあったら、賛成してくれれば、という話と、これだけ身を切っているのに、みたいなことを聞いたら、趣味もなくて、友達もいないし、自分のためじゃなくてお金使ったりするほうが楽しいです、と言っていて、あとになって、貴志、というのが本名の一部だったら、本当に貴い志だと思った。
帰り際に、チョコレートの作品の前で、別の人が話をしていて、その内容もそうだけど、その声の響きにすごく真剣さを感じ、その作家・おおば英ゆきは、かなり年齢が上の方だと思い、ずっとアートに関わってきて、壁を感じて、壊そうとして学び始めて、そして定年のあとで、といった言葉で、そういうチャンレジをしている人がいる心強さと敬意も感じ、だけど、壊すという事と、額にこだわることの理由が分からなくて聞いたら、いろいろと答えてくれ、さらには、他の作品のことで話をしたら、それ使っていいですか、などとも言われ、うれしかったけど、その人の真剣な言葉に反応しただけでもあった。
結局、30分以上はいたと思う。
充実した時間だったし、ギャラリーとは思えないほど、言葉と話し声であふれていた。
(2018年の時の記録です。多少の加筆・修正をしています)