アート観客   since 1996

1996年からアートを観客として見てきました。その記録を書いていきたいと思います。

からぱた写真展。2014.4.24~5.6。Hidari Zingaro。(トークショーも)

からぱた写真展。2014.4.24~5.6。Hidari Zingaro。(トークショー

2014年4月29日。

 村上隆ツイッターで、写真という表現そのものに対して根本的な疑問を出している人がいて、それがサラリーマンでありながら写真集を出して売れて、という人で、そのことを面白がった村上隆が個展を開くという事になり、それだけでなく、トークショーも行なうということになり、それも4時間くらい、5つのテーマでゲストも変えて続けるという企画で、行こうと思った。

 

 中野ブロードウエイ。どんな店があるか分からないくらいゴチャゴチャしていて、少しだけ似ているのは、風俗まで入っている駅前にあるニュー新橋ビルかもしれない。というのとは全く関係なく、ヒダリジンガロは、いつも行くたびに思う狭さがあるのだけど、そこに写真が並んでいた。シャープで色がキレイで、まとまっている。いろいろな世界のはずなのに、パッケージされている感じ。個性みたいなものはあるかないか分からないのだけど、世界のあちこちの風景がそこにはっきりとあるのは分かる。そして値段もつけてあり、エディションが5までの作品で1枚が3万円ほど。売れているものもあった。

 

 すごい、ということまでは思わなかったが、この個展まで実現させた、というストーリーこみだと、急に魅力が増すのだろうと思った。

 

 2階のスペースジンガロに向かう。途中にバージンガロ。ものすごくおしゃれな人ばかりがいて、入りづらいが、そのそばに黒いカーテンがあって、その奥にスペースがある。コンクリートを壊して、そこに急に作ったのが分かるような場所。置いているのがいわゆるパイプイス。おそらく50人以上はいる。ほぼ満員。しゃべっているのは、第3部。「フードポルノ考現学」の途中だった。めん類の写真がスライドで出ていて、ビールを飲みながらしゃべっている少し怪しいおやじだけど、少し見ていたら、いろいろな変わったメンが出ていて、それを楽しそうに語って、会場にも笑いが起こっている。

 

 それが終って、次の第4部。『あした、なに撮って生きていく?』〜プロカメラマンの生態を知る
 (小林百合子/聞き手:からぱた)。この小林さんという人が、プロカメラマンだと思っていたが、話が始まったら、今回のカメラマンの大学の後輩で、今は専門誌の編集をやっている女性だった。

 

 どういう人がプロなんだ、という事に関しての質問に対して、もう展覧会までやっているんだから写真家なんだ、サラリーマンですから、みたいな言い訳をするな、みたいな話から始まって、その小林氏という人の今の仕事についての話になった。

 

 山と渓谷社という老舗で、山岳カメラマンというベテランで、専門家ばかりがいて、新人が入って来れない世界を作っていて、山を撮りたい、という女性を閉め出しにかかった。そういうのが嫌いで、というか、女性だけで雑誌を作った。負けたくないから、年間125日も山に上って撮り続けた。フィルムを使うから、着替えも持たず、臭かったりする中で撮り続けた。だけど、からぱた氏は、その女性に対して、この編集者は、熱狂の中にいる。だから、辛いとか、貧乏とか、関係ない。それがカメラマンではないか、という答えを聞いて、こちらの気持ちも明るくなって、本当だと思えた。

 

 さらには、プロになるには?というからぱた氏の質問に、自意識を捨てること、という答えをすぐに返した。感心もした。本当だと思った。自意識を意識しているなんて、まだ余裕があるということで、とにかく伝えたい、という人がプロになっていくんだろうな、とも思った。自意識を捨てて、それでお金がたまる(笑)というような話までになって、その小林氏の話にすごくうまいと思って、感心した。

 

 自意識を捨てる、というのは、生きていくためにもとても大事な事になるのだと思ったりもした。